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59482時間ほど話をすることができた。スティーブン・トピック教授とお会いするのも初めてではあったが、同教授とケネス・ポメランツ(Kenneth Pomeranz)教授との共著(ケネス・ポメランツ、スティーブン・トピック(福田邦夫、吉田敦共訳)『グローバル経済の誕生』筑摩書房、2013年)を翻訳している縁もあり、好意的に昼食をとることができた。『グローバル経済の誕生』は、コモディティ(砂糖、コーヒー、グアノ)の歴史や資本主義と奴隷制、暴力の歴史を端的に、かつ緻密に描きだした大著である(興味をもたれた方は是非、一読されることをお勧めしたい)。翻訳者であることと、石油や鉱物資源などのコモディティ研究に対する理論的方向性にズレがないことをお互いに確認することができ、幸いにも受け入れを承認していただいた。1–2 渡米準備 スティーブン・トピック教授が所属するUCIでの客員研究員としての受け入れが決まった後は、ビザ取得に向けた手続きを進める必要がある。アメリカでは、日本人が90日以上にわたり滞在する場合、非移民ビザの取得が必要であり、商用・学生、専門職ビザなど複数の種類が存在する。大学の研究者が滞在する場合、交流訪問ビザと呼ばれるJ-1ビザを取得しなければならない。アメリカ大使館のホームページによれば、「J-1ビザは、教育、芸術、科学の分野における自在、知識、技術交流を促進するためのビザ」と定義されており、研究をおこなうために渡米する研究者は、このカテゴリーに含まれる。 このJ-1ビザを取得するためには、事前に受入大学側が発行する書類DS-2019(交流訪問者プログラムに参加することを証明する書類、Certicate of Eligibility)を入手する必要があるのだが、これを発行してもらうためには多くのステップを踏まなければならない。 受入大学側が要求する書類は、研究計画書、履歴書(CV)をはじめ、在職証明、預金証明、保険加入証明(UCIが要求する水準を満たす必要がある)などの各種書類をそろえる必要がある。UCIの事務スタッフの方々は非常に有能で、メールでの問い合わせには迅速に対応していただき、手続き上の問題はとくに感じられなかった。 だが、アメリカの新学期開始時期が9月以降であることもあり、結局9月以降にならないとそもそも受付けできないと告げられた。実際にDS-2019が郵送にて手元に届いたのは2018年12月半ばに差し掛かったころであった。書類準備から半年ほどの歳月を要したことになる。現時点(2019年6月)では、アメリカでの非移民ビザの取得には在東京アメリカ大使館で領事との面接が義務付けられている。領事との面接ということで、当日は緊張してアメリカ大使館に足を運んだ記憶があるが、(J-1というビザカテゴリーでもあるためか)面接自体は簡単な事実確認だけで終了した。2 カリフォルニア州アーヴァインとUCIでの研究環境2–1 カリフォルニア州の概況 アメリカ西海岸に位置するカリフォルニア州は、合衆国50州のなかでアラスカ州、テキサス州に次ぐ3番目に大きな州である。その面積は423,970平方キロメートルと、日本の国土面積(377,914平方キロメートル)を凌駕する広大な州である。 その地形は起伏に富んでおり、南北を隔てる標高3,000メートルを超えるトランスバース山脈や南東部にはモハーヴェ砂漠などの乾燥地帯も広がっている。アメリカ大陸でもっとも標高が低く、最も暑い地点であるデスバレー(7月の平均気温は40度以上)もカリフォルニア州に存在する。 南北にながく伸びたカリフォルニア州は、現地では北カリフォルニアと南カリフォルニアという地域名で区分されることがある(公式の地理的定義はない)。北カリフォルニアには、世界をリードするIT企業の集積地として有名なベイエリアを含むサンフランシスコがある。このサンフランシスコには、ロサンゼルスから車で行こうとすると6時間以上のロングドライブを覚悟しなければならない。 一方、南カリフォルニアの最大の都市は、ロサンゼルスである。世界的に有名なビーチであるサンタモニカのほか、ハリウッドやビバリーヒルズなどの観光名所が集まっているアメリカでも有数の観光都市だ。 そして、南カリフォルニアは月平均気温の振れ幅が年間を通じて小さく、気候が非常に安定している。実際、ここ3カ月の間で一日中雨が降り続けるということがほとんどない(午前中は曇りの日も多い)。天気の良い日は真っ青な空のもとで、心地よい微風

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