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6048(Breeze)が吹く爽やかな一日となる。3–2 アーヴァインについて 受け入れ大学であるUCIは、ロサンゼルスから車で1時間ほど南に下ったオレンジ郡のアーヴァイン(Irvine)という都市にある。アーヴァインからさらに1時間ほど南下するとメキシコ国境に近い都市サンディエゴがみえてくる。 メキシコとの国境に接するカリフォルニア州の特徴のひとつは、その人種構成にある。2010年の国勢調査によれば、白人40.1%に対して、ヒスパニック系が37.6%を占めており、多くのラテンアメリカからの移民が居住する州といえる。それゆえ、街の至るところにメキシコ料理店が軒をつらね、スーパーではメキシコ料理の食材を多く目にする。ソーシャルセキュリティーナンバー(Social Security Number、SSN)(社会保障局が個人に発行する9桁の固有の番号であり、アメリカではSSNが個々の住民を認識するためのIDとして重要な役割を果たしている)を申請するために公的役所を訪れた際には、任意ではあるもののヒスパニックかどうかの確認がおこなわれた。 一方、居住先のコミュニティの住人の人種構成は、中東系を中心に、ロシア人、アジア人(インド、中国、韓国、ベトナム)が大多数を占めている。日本人をみかけることはほとんどないが、アメリカ人コミュニティのなかにアジア人(日本人)が居住するというよりは、多種多様な民族が混在するなかで生活するといったほうが適当である。異なる人種、言語、文化圏の人々とどのような社会を構築していくべきなのか、ここカリフォルニア州は、日々の生活でもその最前線の地にいることを実感する。 さて、アーヴァインは、60年代から70年代にかけて大規模な都市計画によって発展してきた比較的新しい都市であり、非常に整備された街並みが続いている(写真1)。整備された幹線道路沿いに大型のショッピングセンターやモールが点在し、その周辺にコミュニティと呼ばれる住宅街が形成されている。驚くのは、その大半が、大手不動産開発業者であるアーヴァイン・カンパニーの手によるものであることだ。住宅だけでなく、ショッピングモールなどが一つの大手企業によって開発されているので、どこにいっても同じような雰囲気の建物が立ち並んでいる。建物の高さ規制や外観の色調などに厳しい規制があり統一感が生み出されているのは確かであるが、相似した建物が並ぶ光景は人工的な感も否めないのが個人的な感想である。 また、近年では暴力事件や窃盗などの犯罪率が非常に低い地域として全米でも有名な街のひとつにアーヴァインが挙げられることも多い。 銃社会のアメリカでは、居住先を決める際に治安面が重要な要素となってくる。例えば、ロサンゼルス近郊には、イングルウッド(Inglewood)やコンプトン(Compton)など依然として治安の悪い地域が存在する(実際に、その周辺を歩くと、ブロックひとつ隔てただけで雰囲気がガラッと変わる)し、これまで日本企業の多くがロサンゼルス近郊でも比較的治安の良い地域とされるトーランス地区に拠点を構えてきたが、トーランス地区でも最近、銃撃事件(2019年1月6日、6月3日)が発生している。 整備された街並みと治安の良さからか、最近ではアーヴァインに移転・進出する日本の現地法人(マツダ、東芝、マルちゃんなど)も増えており、日系スーパーや医療関係なども充実しつつある。 流行の先端をいくロサンゼルスの華やかさや国際空港へのアクセスなどの利便性はないが、落ち着いた雰囲気のなかで研究するにはアーヴァインは非常に適した街と言えよう。写真1 整備されたアーヴァインの街並み3–3 UCIについて アーヴァインが新興都市であるのと同様に、UCIも1965年創設の比較的新しい大学である。広大なキャンパスは、中心部の円形の緑地・芝生地のまわりを、医学・生物、ビジネス、芸術、教育、工学、人文等の学部毎のブロックが囲むように配置されている。 そして、UCIのキャンパスを歩くと、流線形のパ

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