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6348産官学連携をつうじた社会課題解決型アクティブ・ラーニングの可能性リサーチ&レビュー千葉商科大学人間社会学部専任講師小口 広太1. はじめに2019年度、2020年度の2年間、経済研究所の研究プロジェクトとして「産官学連携による社会の課題解決型アクティブ・ラーニングに関する研究」を実施する。メンバーは人間社会学部から朝比奈剛教授(経済学)、勅使河原隆行准教授(社会福祉学)、筆者(地域社会学、プロジェクトリーダー)に加え、一般社団法人CSV開発機構の小寺徹専務理事を経済研究所の客員研究員として招聘し、本プロジェクトへの参画をお願いした。3名の教員は専門分野が異なるものの、いずれも人間社会学部のアクティブ・ラーニング(以下、AL)を指導してきた経験を持つ。朝比奈は弘前ウェディング、勅使河原は東日本大震災の復興支援や千葉県山武市の地域活性化、小口は実践科目であるプロジェクト演習(2020年度から「まちおこし実践」に名称変更)を担当し、今年度新たに農村ツーリズムin岩手県花巻市を立ち上げ、都市農村交流と関係人口づくりに取り組む。また、小寺氏は全国各地で大学、自治体、企業、NPOなどが協働で地域活性化に取り組むプロジェクトを立ち上げており、現場の動向に精通している。弘前ウェディングでは、朝比奈とともに学生の指導や産官学の調整を行った経緯がある。本稿では、本プロジェクトにおける研究の背景や目的、経過報告などを紹介する。全体の流れは次のとおりである。第2節でALについて概観した後、第3節では本プロジェクトで研究対象とする産官学連携型ALの位置付けと人間社会学部が取り組むALの特徴を紹介し、続く第4節で研究の目的を明らかにする。最後に第5節ではプロジェクトの経過報告を行い、今後のスケジュールを述べる。2. ALとは何かまず、本プロジェクトで焦点を当てるALの動向や役割について見ていく。ALは、これからの大学教育を考える上で重要なキーワードとなっている。その背景として、2012年の中央教育審議会答申『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて』においてALが取り上げられ、政策的に推進されていることが挙げられる。そのなかで、ALは次のように定義されている。「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る(中央教育審議会、2012、p.37)」この定義に示されているとおり、ALは従来のように教員が教壇に立ち、一方的に話し、学生が聞くだけの受動的な講義法ではなく、学生が授業に参加し、双方向的な関係性のなかで展開する能動的な学修を指している。すなわち、教員と学生が一緒に授業をつくることがALの基本といえる。そして、その主たる目的は、能動的な学修をつうじて学生が専攻した専門分野の知識を修得するとともに、「社会力」や「人間力」といった能力を育成することにある。また、ALの実践方法については、次のように述べられている。「発見学習、問題解決型学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である(中央教育審議会、2012、p.37)」OGUCHI Kota

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