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65484. 学生の主体性を育てるALこれら以外にも、人間社会学部のALは学生と地域住民の協働プロジェクトから商品開発まで多岐にわたり、対象地域は市内、県内から地方まで広がりを見せている。ALは「一回やって終わり」という単発の企画ではなく、学生が関わり続けて学び、継続していくことが重要となる。なぜなら、就職活動などで忙しくなり、いずれ卒業してしまう学生はALに関わり続けることができず、バトンタッチしなければならないためである。このことは、ALの「仕組みづくり」とも言い換えることができ、学生の成長プロセスとも重なり合う。例えば、弘前ウェディングは学生が地域が抱える課題を発見し、その課題解決に向けて事業提案をするだけにとどまらず、それを現実的に事業化して動かす新たなステージに展開している。真間あんどん祭りやさんむ田んぼアートプロジェクトは学生自ら企画・運営を担い、指導教員の関わり度合も小さくなっているという。ALに関わる学生の成長が目に見える形であらわれていることは、大きな成果といえる。そして、このようなALが多くの学生の参加を受け入れる受け皿にもなっている。2019年度実績で見ると、真間あんどん祭には約100名、さんむ田んぼアートには約50名の応募があった。「何かやってみる」というきっかけを先輩学生が後輩学生に提供し、学びの裾野を広げ、新たな担い手を育てている。本プロジェクトでは、人間社会学部がこれまで取り組んできたALの有効性と質的改善に向けた課題の検討を行い、社会に求められる大学教育、とりわけALのあり方を提案し、本学全体の学修、教育活動に貢献することを目的としている。そのため、人間社会学部のALの展望と可能性を実証的に研究するとともに、本学で多彩に展開する他学部のAL、さらに他大学が実施する先進的なALの事例を調査し、比較分析を行う。5. 経過報告と今後について本プロジェクトは動き出したばかりで、まだ具体的な成果は出せていない。現在は、各メンバーが研究計画を立て、その共有を行っている段階である。本格的な調査は、2019年9月以降となるが、ここでは勅使河原が5月に実施した台湾での調査と小口が実施予定の研究の概要を報告する。(1) 台湾でのオリジナルコーヒー販売に関する現地調査勅使河原は、ゼミ生とともに東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故からの復興支援に取り組んでいる。そのひとつに、2014年度から開催している「ままカフェ@千葉商科大学」がある。本学近隣に避難された方々、とりわけ子育て中の親子の避難先での悩み相談や交流などを目的に、子どもたちの遊び場も設けてくつろげる場を提供している。その参加者と学生が共同でオリジナルコーヒー「CUCブレンド」を開発した。現在は、株式会社CUCサポートや市内のコーヒー店などで購入することができるが、今後は海外展開として台湾での販売を目指している。台湾は日本と同様に震災が多く、災害に対する関心が高い。東日本大震災時には日本に200億円以上の義援金を送り、そのほとんどが一般国民からの寄付であったという。義援金のほかにも、人的な派遣も含めて両国は協力関係を構築してきた経緯がある。2019年5月1日~3日に実施した調査では、CUCブレンドの消費者ニーズの把握を目的に、台湾国立中正大学社会企業研究センターの協力のもと、消費者へのアンケート調査やヒアリング調査、販売状況の確認を行った。現在、アンケート調査の集計を進めている。さらに特筆すべきこととして、CUCブレンドを台湾嘉義県梅山郷の藝顔画社にてテスト販売することが決まり、引き続き台湾において消費者ニーズの把握や販売状況に関する調査を実施予定である。(2) 農山村における「域学連携」地域づくりの意義と課題小口は、大学と地域が連携・協働して地域づくりに取り組む「域学連携」を研究対象にした。総務省によると、域学連携とは「大学生と大学教員が地域の現場に入り、地域の住民やNPO等とともに、地域の課題解決や地域づくりに継続的に取り組み、地域の活性化や人材育成に資する活動」を指す。前述したとおり、人間社会学部のALは農山村との連携を軸にした取り組みも多く、他学部と比較しても大きな特徴といえる。

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