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特 集EBPMと行政事業レビュー548され、本州、北海道、四国、九州、沖縄本島を除く6,847島が離島となっている。このうち、離島振興法の対象となる有人離島(H30.4.1現在)は225島である。「離島の自立的発展を促進し、島民の生活の安定及び福祉の向上を図るとともに、地域間交流を促進し、もって無人の離島の増加及び人口の著しい減少の防止や定住の促進」(離島振興法第1条)を目的とする。振興策としては具体的には補助率の嵩上げ(法第7条)や医療の確保等(法第10条)が含まれる。しかし、離島に限らず、我が国は高齢化と人口減少という新しい社会・経済に直面しており、離島振興の在り方そのものが問われている。特に統計(データ収集・分析)とともにEBPMの柱である「ロジックモデル」の妥当性が問われてくる。EBPMとは?2本節ではEBPM(「根拠に基づく政策立案」)の概要について説明する。EBPMの要は①政策立案の前提となる事実認識②立案された政策とその効果を結びつけるロジック(ロジックモデル)③政策のコストと効果の関係(費用対効果)であり、統計(データ収集・分析)は「事実認識と政策効果の測定や予測と評価に関しての客観的な根拠」(国交省資料)と位置付けられる。エビデンスとして最も「質が高い」のは既存の実証研究のレビュー、それらを結合したメタ分析であろう。例えば、ICT化が子どもの学力に与える効果の実証研究が既に多くあれば、その結果をもってエビデンスとすることができる。ただし、海外研究などの場合、文化や制度の違いを勘案したとき、我が国で適用できるか「外的妥当性」の検証が求められる。仮にエビデンスを自分たちで収集するとすれば、必要なデータは①記述統計と②分析統計からなる(総務省(平成30年10月))。このうち、「記述統計とは現状を的確に捉えるもの、分析統計とは(政策の効果の)因果関係の推定を行うもの」と捉えられる。「収集されたデータの特徴(平均、分散、標準偏差、分布など)を明らかにし、データの示す傾向が性質を把握するもの」であるが、そこでは測定の信頼性・妥当性が重要となる。他方、分析統計は、「統計学の手法でデータを解析して因果関係の推論を行うもの」である。この因果関係の推論のためには、必要なデータの収集と処理、統計的な分析手法について正しい方法に則ることが肝要とされる。記述統計の活用例としては地域間での差異の「見える化」がある。無論、高齢化や産業構造など地域のニーズの違いを反映した地域差はあって然るべきだろう。しかし、年齢調整をしてもなお残る高齢者医療費の地域差、人口規模や経済状況が似た類似団体間でも異なる民間委託の程度などニーズの違いでは「説明できない」地域差については検討を要する。こうした地域差は自治体・住民にとって有用な情報になる。他地域との比較は自分たちの取り組み成果を評価するためのベンチ・マークを与えてくれるからだ。相対的に成果が劣ると判断された自治体においては、従前の政策の見直しへの契機(圧力)となる。以って、自治体の「行動変容」(=政策の見直し)を促す。「見える化は歳出改革の推進力」なのである。図表1:地域差の見える化出所:筆者作成

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