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6948を重視している。具体的には、技術力・生産力・情報力によって、顧客の悩み、希望に対する問題解決の提案が真の差別化につながるものと重視されている。次に、技術の練磨に関しては、営業を通した顧客情報を、技術戦略の構築、現状の技術力アップの支援に役立てている。「自力では限界があるので、ある意味では、顧客に育てられるのが製造業である」との説明は、他の中小製造業にも示唆に富む。同社の特徴は、上記の巧みな営業戦略を基にして、果敢に持続的に実行されてきた多角化戦略(新規事業の立ち上げ)にある。縦軸に技術開発の困難度、横軸に市場開拓の困難度を取り、4象限の中で多角化のポートフォリオを意識しながら新規事業を立ち上げてきた。その結果を、「8勝3敗1引き分け」と表現された。さらに、失敗した事業の考察として、「後発で価格競争に巻き込まれた事業は概ね上手くいかない」、「自社の自助努力での技術開発の余地のない事業は継続が難しい」、「製品の成長性の方向を見誤ると競合相手の後塵を拝し上手くいかない」と説明されたが、何れも経験に基づく含蓄のある内容である。EVやハイブリッド車の成長分野向けの半導体新素材の研磨技術開発に9年がかりで取り組み、赤字から黒字化を成し遂げた忍耐強い取り組みにも先見性の確かさが感じられた。中小企業にとってリスクの高い多角化に挑む理由を、「半導体素材関係は技術革新が激しい分野であり、時間の経過とともに技術が陳腐化して価格競争に巻き込まれる。企業として生き延びるためには、新事業の立ち上げは必須である」と説明された。その一方で、「伸るか反るかの勝負はしない」というように、同社の多角化は前述の確かな戦略と先見性に基づいている。さらに、リスクの軽減策として参考になるのが、国のものづくり補助金、サポイン関係の補助金、県の補助金など、施策を十二分に活用してきていることである。また、地域中核企業として、地域の中小企業の育成や地域活性化への多大な貢献も、同社の特徴を成す。会長を務める秩父機械電気工業会では、会員への各種補助金・助成制度の活用支援により、高い採択率を確保している。さらに、秩父市や同業界のみならず、広域秩父産業連携フォーラムの広域かつあらゆる業種横断で、個々の中小企業の経営力強化活動を推進している。秩父ビジネススクールや出前コンサルティング(経営革新計画や補助金の取得支援等)などの斬新な取り組みを通じ、地域の若手中小企業経営者の育成に多大な貢献をしている。同社の取り組みは、他の中小企業の経営や支援の大変参考になる有意義なものであった。3.講習会参加の方々からのご感想・ご要望本講習会の参加者のアンケートにおいては、「第一部では、中小企業の現状、各種補助金全体のお話を聞けて良かった。第二部では、経営手法に感銘を受けました」を一例として、全般的に満足度の高い感想が寄せられた。さらに、アンケートでは、海外進出、IT導入事例、農業の6次産業化、創業支援など、講習会のテーマに関する要望の記載もあったので、今後の機構活動の参考にしていきたい。

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