view&vision48
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誌の構想を練ったのは、今年の行政事業レビューの、春の公開プロセスが始まろうとしているときであった。事前勉強の一環で昨年度の議事録を読んでみるとなかなか面白い議論が展開されていて、これを各セッションの参加者に解説してもらったら貴重な資料になるのではないか、と考えて企画したのが「EBPMと行政事業レビュー」と題した特集である。EBPMは統計学的手法を駆使して政策変数と成果指標の間に真の因果関係が見出せるかを問う研究者と、政策の意義に自信を持ちつつもそれを客観的に示すための適当な指標が見当たらない、あるいは、ともすれば都合の悪い情報はできるだけ表に出したくない行政サイドとの間で多少の温度差が存在するが、その隔たりを解消するには対話による知見の蓄積が不可欠であり、その一助になればと願っている。 他方、【エッセイ】は昨年度まで同僚だった杉田氏に依頼した。彼女がフィールドとする瀬戸内海の睦月島は私も訪れたことがあり、出荷用のみかんを船に積む様子を見せてもらうとともに、広島から渡ってきたイノシシに苦労させられている話なども聞かせてもらった。そんな島の情景を映像で記録し続ける杉田氏に、自由に語ってもらおうと考えたのだ。偶然にも、昨年度の国土交通省の公開プロセスでEBPMの試行的実践の対象となったのが離島活性化事業だったため、エッセイと特集の両方に島の話題が登場することとなった。現地の人が感じていることと霞ヶ関の役人が考えていること、目や耳で感じることのできるものと統計データを通じてはじめて見えてくるもの、どちらも大事にしていきたいものである。 本誌の編集は、4月に所長に就任して最初の大仕事となり、突貫工事で進めざるをえなかったが、各執筆者の真摯な対応と、研究所スタッフや運営委員の方々の献身的な尽力によって無事に発行までこぎつけることができた。関係者各位に感謝したい。[No.48]71編集後記千葉商科大学政策情報学部教授 経済研究所長小林 航本

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