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特 集EBPMと行政事業レビュー748事業=手段で直接コントロールできる範囲を「アウトカム」、外的要因の影響を受けた後の社会的な変化等は「インパクト」とされる。こうしたアウトカム(事業段階)とインパクト(政策・施策段階)に係る成果目標(KPI)が離れすぎると、両者の関係が見えなくなる。因果関係(原因と結果の関係)に破綻・飛躍がないよう「丁寧に順を追ってロジックモデルで明らかにすることが必要」だ。その上でデータによって実際に因果関係が成立しているかを検証する。その際、「アウトカムの目標水準を明確にした上で、政策手段によるアウトプットが、どのようにアウトカムに影響を与えるかのロジック」を与え、「このロジックが説得的であることを裏付けるエビデンスを示す」ことが重要とされる(内閣官房行政改革推進本部(平成29年11月))。EBPMはそのロジックがデータ等により裏付けられるかを検証することが目的だからだ。また、当初のアウトカム(KPI)が達成できなかったとき、その手段であるインプット・アウトプットに遡って、それらの見直しに繋げるフィードバックを出来るようにすれば、実践的なロジックモデルになる。ただし、特に施策レベルのEBPMでは政策の目的と手段が一対一に対応しているわけではない。同じ政策目標(例えば、健康増進)に対して複数の政策手段(例:健診、生活習慣指導など)が講じられている場合、各々の寄与度をみないと、着目する手段(事務事業)の効果は識別できない。なお、必要なデータが入手できるとは限らない。ただし、「関連しそうなデータを集め、それで説明できるロジックを作るという手順」は本末転倒であり、適切でない。むしろ、「本来目的・目的とされるべきものは何であるかについて、虚心に考える」べきであろう。「データが全て揃うことはないし、完璧なデータなどはない」にせよ、「現存するデータを最大限に組み合わせ、活用して、ロジックモデルを構築する」ことだ。例えば「がん検査の受診率と死亡率の低下の中間に初期がんの発見率の上昇が見られるかどうかを見てみる」など、中間指標(中間アウトカム)を用いることで、「因果関係の確からしさを推測する」。いずれにせよ、ロジックを整理することで政策の見直しの必要性が認識され、見直しに繋がることが期待される(内閣官房行政改革推進本部(平成29年11 月))。離島振興策について4行政事業レビューでは、各府省の全ての事業(約5,000事業)について毎年度レビューシートを作成し、無駄の削減をはじめ、事業の効果的・効率的実施を図る観点から検証してきた。外部有識者を交えて各府省が実施する「公開プロセス」と行政改革推進会議の下で行われる「秋のレビュー」がある。EBPMの一環として行政事業レビューでは2017年度から「政策目的とその手段との関係(つながり)を分析し、統計等のデータを用いてチェックを行い、政策の妥当な実施と次の段階に向けた改善を継続的に可能とするためのツール」としてEBPMを試行してきた。平成29年の秋のレビューにおいては「EBPMの試行的検証」とし図表2:ロジックモデル出所:内閣官房資料EBPMの推進 平成30年3月6日 内閣官房行政改革推進本部事務局

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