cuc_V&V_第53号
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1653管理会計研究におけるデータ分析の方法と可能性(neuroscience)の手法を用いた分析が登場しており、管理会計研究における応用が始まりつつある。神経科学を応用した研究は、これまでのデータ分析、すなわち定量的な分析に対し、どのような視座を加えることができるだろうか。新たなる手法として神経科学を用いた研究発展が期待される中、管理会計研究におけるデータ分析の方法や意義について、一度立ち止まって議論することに、意義があるタイミングといえよう。本稿では、管理会計研究における定量的なデータ分析の方法と可能性について検討する。第2節では、伝統的なデータ分析について整理する。第3節では、近年注目されつつある神経科学の手法を応用したデータ分析を行う研究について整理する。これらを踏まえ、第4節では、今後の管理会計研究におけるデータ分析の可能性について議論する。伝統的なデータ分析2管理会計研究は、伝統的に様々な方法により行われてきたことが明らかになっている。ヘスフォードらは、1981年から2000年までの20年間に、主要なジャーナルに掲載された研究を対象とし、研究方法やトピックの集計を行った(Hesford et al.、2007)。以下では、彼らの分類に依拠し、管理会計研究における伝統的なデータ分析の方法について概観する。ヘスフォードらの集計に基づけば、管理会計研究の方法は、分析的な理論研究(analytical)、アーカイバル(archival)、ケース(case)、実験(experimental)、フィールド(eld)、フレームワーク提唱(framework)、文献レビュー(review)、サーベイ(survey)、その他(others)に分類することができる。なお、この際、定性的な研究といえるケースとフィールドは、単一の千葉商科大学商経学部 専任講師森 浩気MORI Kokiプロフィール慶應義塾大学大学院商学研究科後期博士課程(単位取得退学)。主要業績として、「診断型コントロール・システムとインタラクティブ・コントロール・システム概念の操作化 : 経験的研究の回顧に基づく検討」『千葉商大論叢』第57巻第3号(2020年)など。管理会計研究における経験的研究の系譜1管理会計研究は、現代に至るまで、対象とする領域や知見を得るための研究方法を拡張させてきた。このうち、管理会計の概念、ならびに管理会計研究の扱う領域は、日本管理会計学会2017年度年次全国大会での統一論題「管理会計の拡張と実務適用の課題」にて議論されたとおり、経済環境の変化や研究の進展にともない、拡張を続けてきた(伊藤和憲、2018)。具体的な拡張の方向性として、マーケティング(伊藤克容、2018)のような社会科学の隣接分野、統合報告(内山、2018)のような財務会計としての特性を併せ持つツール、そして拙稿(森、2020)で論じた通り、組織の公式的なシステムの外で行われるインフォーマル・コントロールなどが挙げられる。このように、時代を経るごとに管理会計として扱われる研究トピックは多くなってきた。一方で、管理会計の研究方法という観点からも、手法の拡張が始まりつつある。多くの研究は、ヘスフォードらが整理したいずれかの研究方法へと分類することが可能だが(Hesford et al.、2007)、近年は神経科学特 集社会科学におけるデータ分析特 集社会科学におけるデータ分析

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