今できる東日本大震災の支援の形って何だろう?

2017年2月21日

被災地支援東日本大震災からまもなく6年が経過しようとしています。この6年の間には、熊本でも大きな地震があり、また、台風による水害などが全国各地で発生しました。災害発生直後には、行政をはじめボランティアなどが協力して、避難生活に関する支援や瓦礫の撤去などの復興に向けた取り組みが行われます。その様子はさまざまなメディアで報道され、多くの人が関心を持ってきましたが、時間の経過とともに報道に触れることが少なくなりました。地域や世代に関係なく、人々の関心が薄れていくのが現状です。復興庁宮城復興局の聞き取り調査によれば、意外なことに震災を経験した東北の大学生の間でも風化が進んでいることが明らかになっています。

風化させてはいけない!

2016(平成28)年12月4日の河北新報によると、復興支援に取り組む学生スタッフの熱意は右肩下がりであると報じています。復興庁宮城復興局が2016(平成28)年6月~9月に復興支援に取り組む東北の学生団体に実施した聞き取り調査によると、半数が組織の課題に「運営」を挙げていることが明らかになったとのことです。これに関して宮城復興局では、「震災当初は使命感にあふれていても、学生メンバーが交代するとモチベーションが下がってしまうため、代替わりを繰り返す学生団体の宿命である」と指摘しています。さらには、いわてGINGA-NET代表の八重樫綾子氏は、「学生は誰のために、何のために活動をしているのか、本来の目的が分らなくなってきている。若者のひたむきな姿には被災者を元気づけるが、学生団体が活動を継続するには、支え続ける大人がいないと難しい」と指摘しています。(1)
このように、ボランティアとして活動が期待されている大学生に関しても、徐々に復興支援に対する意識が薄くなっている現状があります。震災から6年が経過した今の時点でこのような状況であるため、今後さらに年月が経過すれば、日本人の記憶の中から忘れ去られてしまうのではないかと危惧しています。
ところでなぜ風化させてはいけないのか、という疑問が出てくると思います。被災した人からしてみれば、震災で様々なものを失ったため、震災の辛い記憶を消したいと思う人もいると思います。しかし風化することで一番恐ろしいことは、再度同じような災害が発生した時に、過去の経験が活かされないことです。すなわち、同じ経験を繰り返さないために風化させてはいけないということです。

震災の経験を伝承する難しさ

このことを裏付けるかのように、2017(平成29)年2月6日の産経新聞において、「津波の教訓、伝承する難しさ」という見出しで次のように報じています。2017(平成29)年1月29日、30日に宮城県南三陸町で開催された「語り部フォーラム」には、全国から約300人が集まりました。このような催しに参加する人たちなので、言うまでもなく全員が災害の教訓を残す重要性を認識しています。めいめいが自分のスタイルで風化を防ぐ取り組みに励んでいますが、この人たちが生きている間は良いが問題はその先です。災害は人間の寿命をはるかに超える間隔で襲来します。人はその間に代替わりが進み、その度に記憶と教訓が薄れます。しかも加速度的に。さらには、漁で生計を立てる住民は津波被災を受ける都度、住まいを高台に移します。しかしそれだと「仕事場の海から遠ざかって不便」と次第に生活拠点を下に戻します。海岸線に再び家並みが整う頃、次の津波に襲われてしまいます。その歴史の繰り返しが、世代を超えて教訓を残す難しさを実証していると報じています。(2)
また、古い書籍ですが1896(明治29)年6月15日に東北地方の太平洋岸で発生した三陸大津波や、1933(昭和8)年3月3日に同地方で発生した大津波の経験を踏まえて災害の予防について綴った『津波と人間』において、著者の寺田寅彦は風化について次のように述べています。「災害記念碑を立てて永久的警告を残してはどうかという説もあるであろう。しかし、はじめは人目につきやすい処に立ててあるのが、道路改修、市区改正等の行われる度にあちらこちらと移されて、おしまいにはどこの山陰の竹藪の中に埋もれないとも限らない。」としています。そして風化防止の方法については、「唯一の方法は人間がもう少し過去の記録を忘れないようにする外ないであろう。」と結論付けています。(3)
このように我々は、いつしか災害の事を忘れてしまい、新たな災害が発生した際にも過去の教訓が生かされずに、再び同様の問題を発生させてしまいます。その意味からも、風化を防ぐことはとても意義があることだと言えます。

誰にでも出来る復興支援

ところで、我々が今出来る復興支援にはどんなことがあるでしょうか。復興支援というと、瓦礫の撤去や炊き出しなどのボランティアを想像する人が多いかもしれませんが、6年が経過した今では支援の内容が異なっています。また、復興支援を行うにあたっては、これまで紹介してきたように風化させないことも意識することが大切です。 例えば食品を購入する際には、被災地で生産加工されたものを意識して買うことも復興支援に繋がります。特に東北の沿岸部では、水産加工業が主力の産業となっていますので、この水産加工業が復興しなければ、この地域が復興しないと言っても過言ではありません。また、学生であれば、例えば学園祭などで東北の食材を使用した料理を提供する模擬店を出店することや、東北の特産品を販売することでも良いです。
さらには、旅行の行き先として被災地を選択し、その地域を観光しながら美味しいものを食べてくるということでも良いと思います。そして、SNSなどで観光の様子や、食べたものなどを紹介して、どんどん情報を発信してもらえれば良いと思います。
そうすることで被災地を応援すると同時に、震災について常に忘れずに、いつどこで発生するか分らない災害に備えて準備を怠らないという意識を持つことが大切だと思います。


【参考資料】

  • (1)河北新報(2016年12月4日)の記事を要約
  • (2)産経新聞(2017年2月6日)の記事を要約
  • (3)寺田寅彦『津波と人間』青空文庫、2003年

解説者紹介

准教授 増田 明子[人間社会学部准教授]
勅使河原 隆行 TESHIGAWARA, Takayuki
[専攻]
社会福祉学