学長コラム

本学の取り組みや教育活動、学生たちの活躍などの最新情報を中心に、時折、原科学長の研究テーマである参加と合意形成、環境アセスメントに関連した話題もお届けします。

原科幸彦学長

皆さま、こんにちは。今年のお盆は暑さが和らぎ、秋のような涼しさを感じることもありましたが、この夏も猛暑のニュースをたくさん耳にしました。冷房がよく効いた部屋で過ごす時間も多かったのではないでしょうか。暑いからといって設定温度を極端に下げたり、つけっぱなしにしたりしていませんか。エアコンは消費電力の大きい家電ということをご存知だと思いますが、電気は私たちの生活に欠かせないエネルギーで、大切に使わなければなりません。

2011年3月の東日本大震災に伴い、福島第一原子力発電所で重大な事故が発生しました。以来、多くの日本人がエネルギー政策の見直しを考えるようになり、それまでの原発依存から持続可能な自然エネルギーによる発電を求める声が高まりました。当時の民主党政権は、原発推進から脱原発への政策転換を図ろうとしてきましたが、2012年から政権を担う自由民主党が打ち出した方向性は、原発依存度を可能な限り低減するというものでした。とはいえ、これから50年の間に原子力に代わるエネルギー源が私たちの生活を支えることになるのは、言うまでもないでしょう。日本の未来を開く鍵は、自然エネルギー社会を構築することにあると考えています。

このような背景から、私は「学長プロジェクト」の4つ目のテーマとして、「環境・エネルギー」を掲げました。

福島原発事故が明らかにしたのは、大規模で集中的な発電の限界と、安定的な電力の確保のためには、発電方法や機器の組み合わせによるエネルギーマネジメントを地域の特性に応じて行うことの必要性です。また、限りある資源に配慮することも忘れてはいけません。本学は日本初となる「自然エネルギー100%大学」への取り組みを通じて、分散型自然エネルギー社会のモデルとなることをめざしていきます。これは、本学が有するメガソーラー発電所を中心に省エネにも努め、学内の消費電力を100%賄うという挑戦であり、 地産地消のエネルギーマネジメントシステムの確立と普及により、社会に貢献しようというものです。それだけでなく、このシステムを社会に広げていくためには、新たな電力会社の起業も必要ですが、その支援を行うことこそが本学の仕事だと理解しています。というのも、どんなに素晴らしい技術も社会に広げなければ意味はなく、それには「商い」の力が不可欠です。

一方、「商い」は新しい技術を用いた商品やサービスがなければ、経済的な発展は難しい。商業と工業は異なるように見えても、互いに支え合うものというのが私の考えです。本学が確立するシステムを、本学の柱である商業のあらゆる知識で社会に浸透させていくことを実現させたいと思っています。

幸い、「自然エネルギー100%大学」の実現はそう遠くない将来に可能になると見込んでいます。数字上にはなりますが、本学のメガソーラー発電所の発電量は学内で消費する電力量の約70%に相当し、これは自然エネルギー発電施設を持つ全国の大学の中で最大の導入率となることも分かっています。これが本学が日本で最初に「自然エネルギー100%大学」になる可能性を示しています。残り30%はLED照明の導入や、教職員、学生全員で電気の無駄使いを防ぐなど、積極的な節電行動の推進により、消費電力量の削減に努めたいと思います。

7月には節電週間を定め、「打ち水で涼しく大作戦」を実施しました。日本の伝統的な涼み方、打ち水によって涼しさを体感することで、クーラーに頼らない夏の過ごし方を考えるなど、学内に節電意識を醸成することを目的としたものですが、延べ1,000人が参加してくれました。地域のテレビ局や新聞でも紹介され注目を集めましたが、誰にでも手軽にできる打ち水で涼を感じることで、ひとり一人が小さな省エネから社会に貢献することを期待しています。

打ち水で涼しく大作戦

5月から4回に亘り「学長プロジェクト」について説明してきました。本学は「会計学の新展開」「CSR研究と普及啓発」「安全・安心な都市・地域づくり」「環境・エネルギー」の4つのテーマから持続可能な社会づくりに全学で対応していきます。前号でもお伝えした通り、各テーマの具体的な取り組みはCUC公開講座で紹介しますので、ぜひご参加ください。