身近な知識を見える化(データ化)しよう—千葉商科大学のキャンパス内の二酸化炭素(CO2)吸収量の推計—

2016年2月5日

はじめに

身近な木をイメージしてみてください。それはサクラでしょうか。あるいは、クスノキでしょうか。今は花粉の時期でもあるので、杉の木かもしれません。植物は光合成によって空気中の二酸化炭素(CO2)を取り込み、酸素(O2)を吐き出します。このことは、小学校や中学校の理科を通じて『すでに知っている』知識です。それでは先ほどイメージした木は、1年間でどれぐらいの量のCO2を吸収しているでしょうか。

植物が光合成をすることで、CO2を吸収することはよく知られています。エネルギー(電気や化石燃料など)を利用することで、CO2が排出されることもよく知られています。地球温暖化の原因物質がCO2であることもよく知られています。しかし『CO2の量は? (重さや体積)』と質問されたら、回答に困るのではないでしょうか。

2015年度の杉本ゼミナールでは、本学の樹木を測定し、キャンパス内の二酸化炭素(CO2)吸収量を推計しました。その結果を交えて、今回のソコ知りナビでは、身近な知識(光合成)を見える化(データ化)する方法についてご紹介します。

手順: 二酸化炭素(CO2)吸収量の見える化

今回紹介する手順は、次の通りです(1)
ゼミナールでは、キャンパス内の樹木を計190本測定しました。測定結果一覧をすべてお見せすることはスペース上困難ですが、一部をご紹介します(表1)。測定によって得られたデータ(幹の太さ、樹木の種類)を用いて、先ずは葉の面積を計算します。葉の面積の量によって、光合成でのCO2の吸収量が決まります。

  • 樹木の幹の太さを測定し、記録する(地面から130cm程度の高さで測定)
  • 既存の資料(データ)を参考に、幹の太さから葉の面積を推計する
  • 葉の面積からCO2吸収量を計算する
  • 計算されたCO2量から発電(電気)換算を試みる
表1 樹木の測定結果(一部)
No. 場所 幹の太さ[cm] 木の種類
1 瑞穂会館 110.5 落葉樹
2 6号館 241 常緑樹
3 テニスコート 227 落葉樹

計算1: 『幹の太さ』から『葉の面積』へ

幹の太さと葉の面積の関係は、独立行政法人環境保全機構の『大気浄化植樹マニュアル2014年度改訂版』のデータを参考にします。

樹木の種類によって、葉のつき方は異なりますが、ここでは落葉樹か常緑樹で区別します(表2)。表のデータでは、例えば「幹の太さ120cmの落葉樹」について、表から読み取ることができません。そこで、Excelを用いてグラフを作成します。ここでは、参考として落葉樹のグラフを示します(図1)。図には、直線と曲線、そして式が2つ書かれています。y=5.241xの式は、表のデータを直線と見なした時の、幹の太さと葉の面積の関係式です。

y=0.2263x1.6556の式は、表のデータを曲線(指数関数)と見なした時の、幹の太さと葉の面積の関係式です。R2は決定係数といい、「1」に数値が近いほど関係式の当てはまりが良いことを示します。杉本ゼミナールでは、指数関数の式を用いて樹木の葉の面積を算出することにしました(2)

表2 樹木の「幹の直径」「幹の太さ」「葉の面積」のデータ(※1)
幹の直径
[cm]
幹の太さ
[cm]
葉の面積
(落葉広葉樹[m2])
葉の面積
(常緑広葉樹[m2])
2 6.28 5 3
3 9.42 9 6
4 12.6 15 10
5 15.7 20 15
10 31.4 70 50
15 47.1 150 90
20 62.8 200 150
25 78.5 300 200
30 94.2 400 300
40 125.6 700 500
50 157 1000 700

※1 「幹の直径」と「葉の面積」は独立行政法人環境再生保全機構(2015)『大気浄化植樹マニュアル 2014年度改訂版』のデータを参照しています。「幹の太さ」は、直径を基に算出した結果を示しています。


図1 樹木の幹の太さと葉の総面積の関係(落葉樹の場合)(※2)

※2 グラフは【散布図】で作成し、【近似直線(曲線)の追加】で直線や曲線を書き入れています。

測定した190本分の樹木について、幹の太さから葉の面積を求め、それを合計したところ、葉の総面積は135,323[m2](約13万5千m2)となりました。

計算2: 『葉の面積』から『二酸化炭素の吸収量』へ

和歌山県のwebページで閲覧できる資料『樹木の二酸化炭素(CO2)吸収量を知ろう』によると、葉の面積から二酸化炭素の吸収量を算出する計算式は、

【1年間のCO2の吸収量】=【葉の面積】×2.6

と紹介されています。なおこの計算式は、樹木による光合成と呼吸を考慮した計算式です。
早速先ほどの葉の総面積[m2]に当てはめてみましょう。計算の結果、千葉商科大学のキャンパス内の樹木による、1年間のCO2吸収量は351,840[kg](約35万2千kg)に相当することが分かりました。

発展: 『二酸化炭素の吸収量』を『電力(発電量)換算』へ

『はじめに』でも触れたとおり、発電にともないCO2の排出があります。世界的にも、発電方法の主流は火力発電です。

発電によって排出されたCO2を樹木の光合成によって吸収することができれば、大気中のCO2濃度の上昇を抑えることになります。地球温暖化への効果と見なすことができます。それでは先ほど算出したCO2吸収量は、どのくらいの発電に伴うCO2発生量に相当するでしょうか。早速計算を試みます。
東京電力による公表資料(2015年7月31日プレスリリース)によれば、2014年度における1kwhあたりのCO2排出は、496[g](0496[kg])となっています(3)。この数値は、排出係数といいます。

この排出係数を用いると、CO2吸収量がどれくらいの発電量に相当するかの計算は、

【発電換算kwh】=【CO2吸収量kg】÷0.496

で求めることができます。この式を利用すると、千葉商科大学のキャンパスにおける樹木は、709,355[kwh](約71万kwh)に相当する『発電に伴い排出されるCO2』を吸収していると見なすことができると分かります。

なお、千葉商科大学のエネルギー利用は、約440万kwh(2014年度のデータ)ですので、これは約16%のエネルギーに相当します。千葉商科大学は、樹木の光合成によって、自ら利用するエネルギーの約16%分に相当するCO2の排出を抑制していると見なせます。

おわりに

今回のソコ知りナビでは、身近な知識である『光合成』を取り上げ、光合成に伴うCO2の吸収量の『見える化』を試みました。千葉商科大学のキャンパス内の樹木を取り上げたところ、次のように『見える化』できました。

  • 千葉商科大学のキャンパス内の樹木によるCO2吸収量は、1年間あたり約35万2千kgと推計できる
  • 上記は、約71万kwhに相当する「発電に伴い排出されるCO2」を吸収していることに相当する
  • 千葉商科大学の1年間のエネルギー利用に対して、約16%分に相当するCO2の排出を抑制していることになる

『見える化』については、「CO2の排出権取引を基にした貨幣換算」「葉の重量を基にした肥料換算」などを試みることもできます。『見える化』することによって、多面的に捉えることができ、理解が深まることにつながります。皆さんも「身近な知識を見える化」することにチャレンジしてみてください。

【補注】
(1)樹木を測定するときは、動きやすく、多少汚れても問題ない服装が良いでしょう。また測定の際に怪我をしないように、十分注意してください。
(2)図1で示した直線や指数関数以外にも、2次関数など、さまざまな種類を作成することができます。どのグラフが、一番当てはまりが良い関係式となるか試してみましょう。
(3)ここでは「再生可能エネルギーの固定価格買取制度に伴う調整や京都メカニズムクレジットの反映後」の数値を用いました。

【参考資料】

  • 独立行政法人環境保全機構(2015)『大気浄化植樹マニュアル2014年度改訂版』
  • 和歌山県「樹木の二酸化炭素(CO)吸収量を知ろう」(最終閲覧2016年1月26日)
  • 東京電力「2014年度のCO排出原単位の実績について」(2015年7月31日プレスリリース)

解説者紹介

杉本 卓也[政策情報学部専任講師]
杉本 卓也 SUGIMOTO, Takuya
[専攻]
プランニング、環境アセスメント、参加・コミュニケーション