コンビニの明日を読み解く—コンビニの光と影—

2016年6月2日

私たちとコンビニ

2011年3月11日の東北大震災、2016年4月16日の熊本地震など日本では多くの甚大な災害が近年多発しています。災害直後には人命救助が第一ですが、その次に生活必需品の確保の問題が必ず起こります。2016年の熊本地震直後には多くの県内の商店が営業を再開できていない中で、コンビニ各社では2011年の東北大震災での経験を糧に、震災3日後にはコンビニ大手3社(セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート)は物流を確保し県内97%の地域において営業を再開させ、現地の復興の足掛かりとなりました。また、日常においてもコンビニのコーヒーやドーナツが大流行するなどコンビニは単に流通業の一業態に留まらず私たち現代人の生活と密着していることがわかります。しかし、このような日常、非日常に欠かせないものとなっているコンビニではありますが、私たちの知らないところでは日々進歩を続け、また多くの難題に直面していることをあまり知りません。今回は、コンビニの進化と直面する難題について考えてみたいと思います。

進化を続けるコンビニ

2015年のコンビニの年間売上高は10兆1927億円、来店客数は167億3089万人、店舗数では5万3544店にも上ります。これは流通業の中では群を抜いて最大の規模になります。コンビニが成功した理由は、常に"時代に適応しよう、生活に適応しよう"と挑戦してきたからです。コンビニが日本に展開されて約40年の間、私たちの生活は大きく変化を遂げてきました。代表的なものとして、働き方の変化に伴う単身世帯や共働き世帯の増加、高齢化の進展、急激な都市化の進行などがあげられるでしょう。このような大きな変化をコンビニは逆風とするのではなく、追い風として自らを変化させてきました。例えば、単身世帯や共働き世帯の増加に対応するために、コンビニ弁当や惣菜等の中食の積極的な開発を行ってきました。今では、単身世帯や共働き世帯だけでなく幅広く受け入れられ多くの人の食を支えるまでに成長しています。

高齢化問題にもコンビニは積極的に対応してきました。単に高齢者向けの中食を幅広く取り揃えすることだけで高齢者を取り込むのではなく、商圏の消費者に合わせてコンビニでも生鮮食品や生活用品を置くなどミニスーパー化を推進することで対応してきました。また、行動圏の狭くなった高齢者を支援するために宅配サービス、移動販売などのシステムを積極的に導入したり、若い世代をターゲットにしてきたと認識されていたコンビニが全世代に受け入れられるよう積極的に自らを変化させてきたといえます。

2050年には総人口の3割が東京に集中するであろうと推計されているように急激な都市化が進んでいます。この影響は既に表面化しており、都市への人口流出により地方の商店がどんどん閉店しており、"買い物難民"という人々が生まれています。コンビニは、単に物販にこだわるのではなくATMや郵便や宅配の受け入れなども行っており、今日では地域のライフステーションとして欠かせないものとなり成長を遂げ地域流通に大きく貢献しているといえます。また、先述したようにコンビニは5万店舗以上あることで物流ネットワークを活用したり、移動販売のノウハウを活かして地方の商店空白地域を支援することが大きく期待されています。

コンビニの社会的役割

皆さんの多くは週に一度はコンビニにいっていることが多いのではないのでしょうか。ここまで生活に密着してきたコンビニを活かそうと、行政とコンビニがコラボレーションして双方にメリットがあるように社会的な役割を今日果たしつつあります。まず第1に災害時におけるライフラインとしての機能に大きな注目が集まっています。近年の震災や大雪などの異常気象に際し、コンビニはいち早く物流システムを確保し営業を確保するだけではなく、災害時にはWi-Fiを開放して災害に強いコンビニを情報インフラの拠点にすることで災害時に情報難民を作らないよう取り組みを行っています。

コンビニは5万店舗以上あるというスケールメリットを活かして行政は多くの公共サービスを提供しようとしています。それは単に公共料金や税金の支払いだけにとどまらず、平日にしか取得できなかった住民票などの公的な証明書をコンビニに付設いている端末を利用して取得することができるようにとコンビニと提携する行政が年々増えてきています。

コンビニと行政は協力して、防犯や認知症対応にも積極的に取り組んでいこうとしています。日本では治安の悪化が懸念されていますが、コンビニも治安について貢献をしています。24時間営業しているコンビニも多く、深夜に塾帰りの子供や仕事帰りの女性にとって危険があった場合に駆け込むことができることは住民にとって大きな安心となっています 。また、高齢化社会を迎えたことで認知症の患者も増えてきました。コンビニも行政や社会的要請を受けて認知症患者の見守り事業を行ってます。

コンビニは頻繁な配送や24時間営業、徹底した品質管理のイメージもあり、エコとは対極的に考えられていますが積極的にエコに取り組んでいます。より効率的な配送システムの導入や自然エネルギーを利用した発電への積極的な投資などでエコを達成しようとしています。また品質管理上廃棄せざるを得なかった弁当の廃棄などについてもチルド化を図ることで廃棄ロスの削減に取り組んでおり、社会的責任を果たそうとしています。

このようにコンビニは流通業という枠組みに留まらず、行政と協力として欠かすことのできない社会インフラになりつつあります。

コンビニの影

これまでコンビニの光の部分にスポット・ライトを当ててきましたが、コンビニに影がないわけではありません。コンビニの影は、コンビニのビジネスの根幹ともいえるフランチャイズ・システムにあります。フランチャイズ・システムを端的に言えは、"フランチャイザーといわれる本部がノウハウやシステムなどの魅力的なパッケージをフランチャイジーと呼ばれる加盟店に提供し、一方で加盟店は本部に対しそのシステムに加入する加盟料とシステムを利用や名称の使用などのパッケージ利用に対して売上に応じて対価を支払うという契約に基づき共存共栄を追求する組織"といえます。このフランチャイズ・システムによってコンビニは今日のような巨大流通産業になることができました。

しかし、近年では国内に5万店舗以上が出展し、また同業他社との競争だけでなく地域内に複数出店をするドミナント戦略により競争が過当になっていることから売上が減少した加盟店から不満が噴出するなど本部と加盟店の関係悪化が表面化してきました。この関係悪化の根源にとは、コンビニ会計といわれる本部に有利な会計方法や本部に有利な契約があります。そこで、加盟店に不利な現在のコンビニの在り方を変えようと、コンビニを規制しようとする運動が起こっています。状況は流動的ですが、もしコンビニが規制されることになれば、私たちの生活に多大な影響を与えることは間違いないでしょう。

コンビニの明日は?

コンビニは常に時代や生活に対応しようと様々な取り組みをしています。それは単に商品開発に留まらず、社会的な役割についても取り組んでいることで達成され、一方でコンビニは成長の背景に加盟店とのコンフリクトがあるという二面性があることが分かったと思います。この先コンビニはどうなっているのか、予想してみてください。

i 日本フランチャイズ協会「CVS統計年鑑動向(2015年1月—12月)。
ii コンビニは、24時間営業である必要はなく、14時間以上営業していることを要件としています。

解説者紹介

野木村 忠度[商経学部専任講師]
野木村 忠度 NOGIMURA, Tadanori
[専攻]
流通論、マーケティング論

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