中国語の言語

普通話(標準語)

 十数億の人口を擁している巨大な中国には、多民族国家であるため、漢民族の言語である漢語以外に、多くの言語が話されています。モンゴル族・チベット族・ウイグル族・朝鮮族等々、それぞれ特有な文字と言語を持っています。さらに漢民族の分布地域も広くて、漢語の中にはおびただしい方言の分枝があります。そのため、同じ漢語を母語として使っている人々でも、お互いに聞いても解らないほど言語の壁が厚いです。

 北京語を標準とした「普通話」は、この方言の壁を打ち破るために設定された中国の標準語です。日本ほど徹底的に普及されていないけれども、広東など一部の地域を除けば、テレビやラジオ放送は全部普通話で行われていて、義務教育段階にあたる諸学校の先生たちもだいたい普通話で授業を行います。そのため、純粋な普通話を話せるかどうかは別の問題とすれば、ほとんどの中国人は普通話を聞けば解ります。私たちが勉強している「中国語」もこの中国では最も広く使われている普通話です。

 ちなみに、台湾では普通話ではなく「国語」という言い方を使いますが、中身が同じく北京語を標準とした普通話です。イギリスの植民地時代だった香港の公用語は英語と広東語でしたが、香港特別行政区となる何年前からも普通話の学習ブームは盛り上がってきました。1993年私が香港に行った時、タクシーの運転手や商店の店員などと一所懸命に喋っても通じなかった苦しい経験もあるが、現在はすでに大きく変わったでしょう。


多彩の方言

 中国語には、「郷音」という言葉があり、ふるさとの方言を指す言葉です。『広辞苑』にもこの言葉が出ていますが、日本ではあまり使われていないみたいです。方言があるこそ、ふるさとに対する愛着も深くなりますが、よその者にとってはかえってコミュニケーションの障碍となる可能性も高いです。

 大ざっぱで言うと、漢語は大きく華北・西北・西南地域で通用する北方語、上海・蘇州など江蘇・浙江で通用する呉語、広東・広西などで通用する粤語、福建・台湾などで通用する語(福建語)、江西・湖北などで通用する語、湖南などで通用する湘語、梅県など客家居住地で通用する客家語の七大方言に分けられます。具体的に言うと、各省と各県にもそれなりの方言や郷音が話されています。私の大学時代は河南省の鄭州大学で過ごしました。クラスメートたちは河南省の各地から集まってきたので、数年間の共同生活を通して、やっと河南省各地の方言を聞き分ける能力を身につけました。

 北方語の通用範囲は広く、使用人口も多いです。地方ごとに話し音が様々だが、出身省は違っても相手の話を聞いてだいたい分かります。問題なのは南方の広東語や福建語圏の方言です。出身地が少し離れていても、方言で交流できなくなる可能性は高いです。聞いた話によれば、広州と汕頭(スワトー)は同じく広東省にある港都市で、車でせいぜい数時間の距離です。しかし、住民たちはお互いに相手の「広東語」を聞いても解らず、香港でビジネスをやっている広州人と汕頭人は英語を共通のコミュニケーション手段として利用しているそうです。これは決して大袈裟な話ではないと思います。なぜなら、同じ湖南省出身の私の二人の友人は一所懸命に話していても通じず、やむを得ず普通話に切り替えてやっと通じたことは、北方出身の私が自分の目で確かめたことはあります。

 中国での標準語の普及率はまだ日本ほど高くないので、普通話と方言の共存共栄はしばらく続けているでしょう。


 さて、ここでクイズです。次の地域の中国人または中国系住民の日常生活言語はどんなものでしょうか?「正解」のボタンを押して自分の答えを検証して下さいね。

彼らの日常生活用語は?

地  域

正  解

香 港 の 人 々

台 湾 の 人 々

シンガポールの中国系住民

 


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