ユニバーシティ・レクチャー「仮想通貨とブロックチェーン」開催報告

お知らせ

2018年6月4日

5月12日(土)丸の内サテライトキャンパスにおいて、「第16回ユニバーシティ・レクチャー」を開催しました。京都大学・公共政策大学院教授で、PwCあらた有限責任監査法人スペシャルアドバイザーの岩下直行氏をお招きし、「仮想通貨とブロックチェーン/最近の動向とその近未来」をテーマに講演いただきました。岩下氏は、仮想通貨の現状をさまざまなトピックスを織り交ぜながら微に入り細にわたって解説され、予定時間を上回る熱い講演が展開されました。テーマの話題性と専門家として最前線で活躍される岩下氏の知名度等により、会場を埋め尽くすほどの大勢の聴講者にご参加いただきました。講演後の質疑応答では、活発な質問と丁寧な回答がなされ、テーマの関心の高さが窺えるレクチャーとなりました。

開催趣旨

近年、BitcoinやEthereumなどに代表される仮想通貨が爆発的に普及しています。ここでいう仮想通貨とは、分散ネットワーク上に構築されたブロックチェーンと呼ばれる技術に基づく電子的な決済手段であり、信頼できる第三者を介さずにオンライン上の安全な支払いを可能にすることをその目標としています。
しかし、仮想通貨の送金が安全であるという事が、必ずしもそれを利用した取り引きの安全性を保証するものではありません。仮想通貨の盗難や詐欺事件が横行している現状は、仮想通貨を取り巻く技術的、制度的な環境が未熟であることを示しています。
本レクチャーでは、金融ITのエキスパートであり、日本銀行フィンテックセンター創設、初代センター長に就任された後、現在、京都大学大学院でご活躍中の岩下直行教授から、仮想通貨の現状と法整備の動向、中央銀行による仮想通貨発行の可能性、仮想通貨を活用した安全で公平な金融システムの実現等について解説いただく。

講演トピックス

  1. 仮想通貨取引の実際
    「世界のビットコイン・ノードの分布」「ビットコイン採掘時の各ノードの役割」「マイニング(採掘)の実態」「ビットコインの秘密鍵の管理方法による分類」
  2. Bitcoinの誕生とその前史
    「Satoshi Nakamotoの論文」「Bitcoinの誕生前史を読み解くと」「何故Bitcoinが成功したのか」
  3. 仮想通貨価格の乱高下とその原因
    「ビットコインの価格と利用者数の推移」「ビットコインの価格の推移(直近2年間)」「全仮想通貨の時価総額の推移」「ビットコインの通貨別取引額の構成比」
  4. ICOを巡る国内外の動き
    「ICO(Initial Coin Offering)とは」「発行時期別のICOトークン収益率」「テックビューロ社のICOプラットフォームCOMSA」「COMSA・ICO(トークンセール)の詳細」「ICOの半数以上(56%)はまだ何かしらのプロダクトすら存在しない」「米国SEC(証券取引委員会)の検討結果の公表」「米SEC、仮想通貨資金調達(ICO)2件を詐欺で告発」「MAS(シンガポール通貨庁)がICOの規制を表明」「中国の通貨当局はICOを全面停止」「中国はなぜ、ICOと仮想通貨を禁止したのか」「中国はビットコイン交換所もマイナーも規制」「日本の金融庁もICOに対する注意喚起を公表」
  5. コインチェック事件と取引所セキュリティ
    「コインチェック社の仮想通貨不正流出事件の経緯」「コインチェック事件におけるNEMの動き」「盗まれたNEMはどうなったか?」
  6. トラストとトラストレスの狭間で
    「信頼できる第三者(CA)が存在する方式=トラスト」「信頼できる第三者が存在しない方式=トラストレス」「でも、仮想通貨交換所は「信頼できる第三者」となっている」「サトシ・ナカモトの構築した世界」「当初はそれでよかった」「しかし、2013年頃から状況は変化する」「トラストレスからトラストに逆戻り」「再び、トラストレスの世界は来るか」「ブロックチェーンは魔法の杖ではない」
  7. 中央銀行デジタル通貨を巡って
    「中央銀行デジタル通貨の3つの系譜」「日本銀行スタッフによるサーベイ」「世界人口の約半分は銀行が使えない」「ケニア発のM-PESAが金融包摂を実現」「南米における中央銀行デジタル通貨の実装」「ベネズエラの奇妙なデジタル法定通貨」「ベネズエラはPetroで50億ドルを調達か」
  8. .金融庁における検討作業
    「金融審議会;金融制度スタディ・グループ」「金融庁;仮想通貨交換業等に関する研究会」

公開シンポジウム

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