RSS中小企業支援研究創刊号
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9中小企業支援研究 Vol.1なくて「財政ファイナンス」とみなされて国債が暴落する恐れがある。大量の国債を買い入れた日銀が通貨価値を維持しようとして国債買入れを抑制しようとするようになれば、国債が暴落する。もしも国債が暴落すれば、金融市場の金利が急上昇し、借り入れを行っている民間企業に打撃が生じる。また、国債に依存している国家の利子負担が増大し、財政悪化がさらに進行する恐れもある、さらに、大量の国債を保有している銀行にも大損失が生じる。日本銀行が大量の国債を保有するようになった結果、それを売却できなくなり、日本銀行が金融緩和政策からの出口戦略をとれなくなる。インフレが生じたときに中央銀行がそれを抑制できなくなり、中央銀行としての役割を果たせなくなる。これは中央銀行としての役割の喪失、中央銀行の事実上の倒産である。(4)株高、円安についての問題通貨膨張が直ちに円安をもたらすとは限らない。これが円安をもたらすとしても、グローバル化が進んでいる日本経済にとって、輸出を増大させる効果は限られている。円安が生じるとすれば、原材料やエネルギ―資源の輸入価格を上昇させて、これらの輸入に依存している企業の収益を圧迫する。また、輸入品やエネルギーの価格を上昇させて、これに依存している国民生活に打撃を与える。資産としての株式の価格が将来へのインフレ期待や経済成長期待によって上昇したとしても、それが実体経済の好転をもたらすとは限らない。成長戦略、産業構造転換が掛け声倒れに終われば、株価は低落する。(5)公共事業への財政歳出についての効果に疑問がある公共事業への財政歳出の景気回復効果は大きくない。また、これは財政改善に逆行する。(6)成長戦略に関する問題点成長戦略に関しては、規制緩和をして従来新規参入ができない部門への企業進出を認めることは、すでに権益を持っているものの抵抗を受けることとなり、容易に実現できるものとはいえない。雇用制度改革などを伴う規制緩和が国民生活の向上に繋がるものかどうかについての検討も必要である。それは正社員の解雇自由を求めているのではないか。企業減税は、大衆課税としての消費税を引き上げる一方で、儲かっている大企業を支援するものではないか。TPPには農林水産業や食の安全、医療などが危機にさらされるという問題があるのではないか。このように、アベノミクスには効果が乏しいばかりか副作用がある、ということが指摘されているのである。4.アベノミクスをどのように考えれば よいか(1)株式価格上昇や円の為替相場の低落の評価についてアベノミクス採用後、物価はやや上昇した。この物価上昇の多くは、通貨価値低落というよりも円安によるものであった。またこれは、必ずしも実需に伴うものでもなかったが、消費税増税前の駆け込み需要は反映している。アベノミクスは、短期的には、将来の株式価格上昇の期待(予想)を強めた。2013年には第2表に見られるように株価が上昇しているが、その予想が株価上昇に寄与したと考えられる。株高は部分的に高額消費財の需要増大や輸出の増大につながったということが指摘されている。また、アベノミクスは、短期的には、円の価値下落への期待(予想)を強め、円の為替相場の低落を促した。第2表に見られるように、2013年に円の為替相場は大幅に低落している。第2表 円相場、株価、長期金利の推移(出所)『日本経済新聞』2014年1月12日付。851.0%0.80.60.42013/1(注)円相場は最新データのみ海外終値。 それ以外は東京終値35791114/116000 円1400012000100001ドル=円円相場日経平均株価長期金利9095100105110

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