RSS中小企業支援研究創刊号
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11中小企業支援研究 Vol.1の増大と賃金の上昇を図ることが重要である。このために金融機関になにができるか、金融機関は中小企業などの経営をどのように支援すればよいのか、中小企業の現場力をどのように強化すればよいか、ということに知恵を絞ることが大切である。現在企業融資は、低迷を脱していない。中小企業向け融資が広がる兆しが見られるという指摘もあるが、2013年の国内銀行の中小企業向け貸出残高は、170兆円と、2000年のピークに比べて2割以上減っている。金融機関は、取引先企業との関係を密接にし、企業に対するコンサルタント機能を発揮し、中小企業の財務改善、資金繰り、商品開発、販路開拓、技術開発、後継者育成などを支援することが必要である。(4)大胆な金融緩和政策の副作用への警戒が必要中央銀行は投機をあおるべきではない。日銀が無制限にお金をばらまき、これが市場で供給力を上回る購買力を創出するようになれば、お金の値打ちが下がってしまう。このような事態が生ずれば、お金を受け取り、これを保有する人々はお金を受け取って本当に大丈夫かという不安を感じるようになる。お金の値打ちが下がり、物価が上昇する恐れがある。このような事態はなんとしても避けなければならない。お金の値打ちが下がりすぎないように注意する必要がある。 2年以内に2%以内の物価上昇が困難でも、長期的に見れば供給制約からインフレが大きな問題となる恐れがある。海外の要因によってもインフレが生じる恐れがある。膨大な国債を保有するようになった日本銀行は、異次元的金融緩和からの出口を見出すことができないような段階に入ってきているのではないか。(5)公共投資による経済の立て直しに限界がある経済対策のために財政歳出を増やすことは確かに景気刺激効果がある。しかし、その波及効果には限界がある。また、この歳出の増大は財政状態を悪化させる。財政の健全化が日本にとって喫緊の課題である。基礎的財政収支の黒字化の目途が立っていない。したがって、公共投資の増大によって経済を立て直すことには限界がある。またこれは、財政の健全化や社会保障の充実を十分に配慮したものとして実施するものでなければならない。財政再建は必要なことである。(6)成長戦略をどのように進めるか現在、成長戦略をどのように進めるかということが大きな課題となっている。この戦略方策がアベノミクスが成功するかどうかの大きな鍵を握っている。成長が本当に必要であるのかという議論もあるが、成長が必要であるとしても、この戦略の実行は容易ではない。中小企業・地域企業活性化、基礎研究の支援を含む科学技術の振興・技術革新の推進、医療などに関係する成長産業部門の育成、再生可能エネルギーの開発などを行う必要性は確かにある。だがこれが一部のものに利益をもたらすだけであるということにならないようにしなければならない。それを国民の合意形成を図りながら実施していくことが大切である。企業利益優先で国民の福祉と権利を犠牲にするものとはならないようにしなければならない。産業競争力の強化、女性の社会参画も確かに必要であろう。だが規制緩和を重視して正規社員の人員削減・賃金引き下げ・労働強化策に終わることにならないようにしなければならない。雇用の回復が重要である。農業を含む地域経済の維持は、この観点からも必要である。国民の暮らしを良くするという視点が忘れられてはならない。経済の復活のためには地域と中小企業の維持・発展が必要である。高い技術力を持っている中小企業、世界市場で十分に競争できる潜在能力を持つ中小企業だけを支援して、モノづくりを支える基盤技術を有する中小企業、雇用の7割を支えている中小の多くを退場させるようなことは回避すべきである。また、成長戦略は、財政健全化、社会保障の充実と両立させながら進める必要がある。(7)デフレ対策よりも少子高齢化対策の方が重要日本の抱える最大の問題点の一つが少子高齢化問題である。この問題があらゆる部門に影響を及ぼしており、これが現在から将来にわたり、日本経済の重荷になっている。日本にとってこの問題の解決に取り組むことが、困難ではあるが緊急の課題である。このことも忘れられてはならないであろう。

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