RSS中小企業支援研究創刊号
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42中小企業支援研究学術論文28 中小企業等が新たに借入を行う場合には、経営の健全性を維持する点からは、一定期間内の返済を求めることは不可欠と考えられる。29 本来の意味は「約束、誓約」で、金融機関が融資(シンジケートローン、ノンリコースローン、LBOローン等)や社債などの取り組みにあたり、契約内容に記載する一定の特約条項(義務、制限等)のことをいう。本特約は、資金供給者側に不利益が生じた場合に、契約解除や条件変更ができるように契約条項中に盛り込まれるものである。一般的なものとしては、報告・情報提供義務条項、担保制限条項(ネガティブ・プレッジ条項)、資産譲渡制限条項(アセット・ディスポーザル条項)、財務制限条項、格付維持条項、事業維持条項、財政維持条項などがある。30 中立な第三者機関という立場をとる。また、国の委託機関であることから公平性もある。この公平性を経営革新等支援機関の関与に一定の条件のもとで与えることで、経営革新等支援機関を活用することが求められる。31 複数の関与を前提に、経営革新等支援機関に実績等を基に調停の機能を認定する。研修等での養成も一つの方法である。複数機関の関与とともに、経営革新等支援機関に対する監督によるモラルハザードの抑制により、この取組み実施は可能である。32 公的金融機関が民間金融機関よりも低い金利で融資を実行することが少なくない。民間金融機関は対抗上金利を低くするか、融資を断念することになる。一方で、経営改善等が必要となった場合に、民間金融機関の費用負担を重くする。このような状況は、支援に対する民間金融機関の消極姿勢に結びつく。そのため、公的な制度利用により民間金融機関の費用負担の軽減は積極的な支援を促進させることになる。33 平成25年12月現在、経営革新等支援機関の実績は得ることができない。今後の経営改善計画をはじめとして実績公表に基づく検証が求められる。測される。企業の存続を支援する視点に立つ場合には、モラルハザードの抑制や地域金融機関の経営維持に留意する必要があるものの借入金の返済28が比較的長期となっても、貸付金が返済されるのであれば問題は少ない。中小企業等の多くは地域と密着していることもあり、長期的視点で支援することが適当ではないかと考える。そのため支援基準の検討は、中小企業等に対する経営改善の支援における大きな課題である。(2)融資におけるコベナンツ29の導入本論文では、中小企業等に対する融資において経営改善が必要となる場合を想定し、事前に経営改善が必要となった場合において、改善の実施及び実績に関する情報提供を求めることをコベナンツと考える。経営者に対する意識醸成とともに、金融機関から早い時期に経営改善を求めること、そして金融機関の助言や外部の専門家等の支援を得て返済不能や長期の償還になることを防ぐことを目的とする。経営革新等支援機関を活用した取組みにおいては、中小企業等にコベナンツを付した支援を受け入れることを求めることが有効である。(3)複数の経営革新等支援機関の関与による支援体制の構築金融機関は金融庁(または財務局、財務事務所)による検査や日本銀行の考査を定期的に受ける。このため、内部統制による健全性とモラルハザードの抑止は担保されている。また、金融機関以外の経営革新等支援機関についても、支援実績に対する報告義務が課され、またその実績も評価される。加えて、経済産業局並びに財務局の認定であることからモラルハザードの抑制が担保される。一方、現場の取組みにおいても複数の経営革新等支援機関が関与し相互確認することで、問題発生の抑制を期待できる。そして、経営革新等支援機関は民間の独立した組織であるため、組織や事務局を設置する必要はなく、そのため、固定費は不要であり税の効率的活用を可能とする。(4)経営革新等支援機関の機能強化(事業再生ADRの援用)協議会では主として金融機関間の調整を行う30。しかし、調整に限界があることも少なくない。その解決策としては、研修実施など一定の条件31下で経営革新等支援機関に事業再生ADR機能を付与する。それにより金融機関との調整期間の短縮、金融支援の早期実施という効果が期待できる。(5)費用負担についての解決策中小企業等の費用負担の解決は大きな課題である。そのためには、既存中小企業等支援センター等との協力が有効と考える。費用負担は経営状況が悪化した中小企業等にとって、また支援する側にとっても課題32である。解決方法としては、既存の中小企業支援センター等の支援制度の援用が考えられる。(公財)東京都中小企業等振興公社では、専門家派遣事業に中小企業等金融円滑化法対策特別枠を設けて支援を行っており、これら制度を援用することで費用負担の解決を図る。特に、公的機関を含めた支援機関間の情報共有により、様々な支援制度の活用を可能とし中小企業等の経営改善を促進することが可能となる。6.むすび以上に述べたように、わが国中小企業等が全企業数に占める割合やの大多数を占め、それが地域経済の担い手となっていることから、その経営改善が経済の振興や地域活性化に有効である。このため、経営革新等支援機関の活用を中小企業等の経営改善支援策として期待する。しかし、今後経営革新等支援機関の活用には実績33をはじめとする検証が求められるなど検討すべき課題も少なくない。本論文では、経営革新等支援機関活用上の問題点を明らかにするとともにその解決策を提示した。今後この課題に関して多くの研究者や実務者による指摘を受けて、この研究の一層の充実を図りたい。

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