RSS中小企業支援研究創刊号
48/60

46中小企業支援研究らに、前述したとおり、同市場においては、高い成長性やイノベーションが企業側に求められており、中小企業の成長力を高めるリーダーシップ研究においても有効と考えた。3.2 研究の概要と目的 「社長は、どのようなリーダーシップを発揮すれば、規模の小さい企業を成長させることができるのか」といった疑問から、先行研究では明らかにされていなかった高い成長性やイノベーションが期待されている東証マザーズ5上場企業とその社長に対象を絞り込み、社長の変革型リーダーシップ6と企業成長力との関係性に主眼を置いた仮説検証型の研究が佐竹(2007)により実施された。具体的には、変革型リーダーシップ尺度のMultifactor Leadership Questionnaire(MLQ 5-X Short Form)7を活用して、社長のリーダーシップを定量的に測定し、スコア化した。 そして、このスコア化された社長の変革型リーダーシップと企業成長力との関連を検討し、東証マザーズ上場企業として、成長力を高めるために求められる社長のリーダーシップを示唆することがこの研究の目的となっている。3.3 リサーチ・クエスチョンと研究のフレームワーク当該研究において明らかにしたいメインのリサーチ・クエスチョンは、「どのような社長のリーダーシップが、東証マザーズ上場企業の成長力を高めるのか」である。そして、これらのリサーチ・クエスチョンを解き明かすために、社長のリーダーシップである「変革型リーダーシップ」を独立変数とし、組織のパフォーマンスである「企業成長力」を従属変数とした。さらに、業種や社員数、設立年数などの「企業属性」と年齢や学歴、社長在任期間、勤続年数などの「社長の個人属性」による違いについての検討を行うために、これらの変数を統制変数として設定した(図1)。3.4 調査対象と時期当該研究では、東証マザーズ市場における上場企業とその社長を対象にした調査を基に考察を行っており、調査対象先企業の多くは、「100人未満」の社員数規模である。同市場では、規模が小さく実績の少ない企業でも上場できる代わりに、それだけ高い成長力と透明性、迅速性が要求される。すなわち、同市場では、スピーディーで大きな組織変革やイノベーションが求められているということであり、これに対応できるだけの社長の力量が、大きく問われることになる。具体的には、2004年12月以前に東証マザーズ市場に上場を果たし、2006年8月時点においても継続して同市場に上場している企業を選定した。さらに、この選定された企業において在任期間が2年(2期)以上の現役社長8を調査対象先とし、同市場に上場する企業の175社9の内90社の企業と社長が、最終的な調査対象となった。3.5 調査方法調査方法は、質問調査票の郵送法を柱としている。また、インタビューと行動観察法などを加え、一次データを収集した。さらに、有価証券報告書や各種文献、資料、インターネットなどを通じて得られるデータなどから、二次データを収集する調査方法を採用した。図1 研究のフレームワーク統制変数違いは?関係は?独立変数従属変数企業属性・社長の個人属性社長のリーダーシップ組織のパフォーマンス企業成長力売上・営業利益の成長率により算出業種・社員数・設立年数年齢・勤続年数・在任期間変革型リーダーシップMLQにより測定したスコア5 東証では、本則市場として大企業向けの「市場第一部」、中堅企業向けの「市場第二部」、成長企業向けの市場として「マザーズ」を提供している。6 英語表記:「Transformational Leadership」7 developed by Bass & Avolio in 19958 有価証券報告書に記載されている代表者とした。9 2006年11月14日現在出所:佐竹恒彦(2007)P.15の図から抜粋研究ノート

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です