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10す。できあがった製品の品質が同じであればどの加工方法を選択しても良いのですが、そこは生産性を意識しています。お客様の支給品にガスケットを塗布し乾燥させてパッキンにして使用することもありますし、当社内で加工した製品に接着剤を塗布してほかの部品と接着することもあります。液状ガスケットは一般に常温で流動性のある物質で、接合面に塗布すると、一定時間の後に乾燥または均一化し、弾性皮膜あるいは粘着性の薄層を形成します。これにより接合部の油密・水密・気密を完全にし、もれを防止するとともに耐圧機能を持ちますが、この性能を実現するために使う液状ガスケットの選択、塗布量の厚み、乾燥温度、乾燥時間等、多くのノウハウが隠されています。小原:手加工のノウハウは具体的にはどんな感じですか。横山:例えばこのようなサンプル(写真①、②参照)があります。黒い素材で見えにくいですが、細長く裁断したスポンジを接着で円状にしていて内側と外側で異なる材質を使い2層構造にしています。内側の径(寸法)に若干ずれがあったとしても大丈夫ですが、外側の径(寸法)がぴったりでないと内側の素材との接着と、外側の斜めにカットしているエンド同士の接着ができなくなってしまいます。つまりこのような計算や正確に接着する技術は地味ですが手作業でないとできません。地味過ぎて伝わりにくいかも知れません。前田:御社の強み、特質すべき特徴はなんでしょう。横山:当社の強みは何なのか。これについてはずっと悩んでいます。 製造業ですから、品質、納期、コストの追求は必ず必要ですが、そこにプラスしていかにお客様のご要望に柔軟に対応できるかということに力を入れてやってきたことにご評価を頂けているのかなというふうには考えています。 例えば、加工した製品にシリアルナンバーを入れてほしい、ですとか、2個ずつ袋に入れて入数を袋に書いてほしい、ですとか、本当に色々な依頼があります。一つ一つは単純なことに聞こえるかもしれませんが、そこを積み上げてこれたのかなと思います。前田:柔軟に要望に応えてきたということですか。横山:将来は、丸投げしてくれたらそれに応えられる会社になっていきたいです。小原:当時と今の受注の仕方に違いはありますか。横山:大きく変わることはありませんが、コストが最優先、という風潮が少し薄れてきて、品質、納期+アルファの部分をお客様が見て評価して下さるようになったとは感じています。前田:何をしている会社と聞かれれば社長は何とお答えになりますか。横山:規格品でないパッキン製品を全てオーダーメイドで作る会社です。ほぼ完全に受注生産でご注文頂いた分だけ作ります。「創業40年以上のシート材加工プロ集団」でもありますし、「自動化しにくい精密手加工のプロ集団」でもありますし、「面倒な加工お任せ下さい集団」でもあります。前田:つまり時代のニーズを組み合わせ、パッキングしているところが強みですね。写真①写真②会社の強みとはノウハウを支える社内体制、組織、品質、人材育成のありかた小原:お話を伺っていると実に見えにくい、分かり難いノウハウをお持ちのようですが、このような技術をどのように引き継いでいますか。横山:技術伝承という面で言えば、基本的には

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