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第3次産業で必要とされるのは、高付加価値業務を担う人材である(高橋2013)。図表2はその業務を個別性と専門性の2軸で表したものである。顧客に個別に対応する頻度が高く、かつ専門性が高い高付加価値業務(プロフェッショナルな能力)が求められている。顧客に個別に対応することは、感情労働が25「肉体労働」、「知識労働」、「感情労働」のうち、「肉体労働」の多くは機械に代替されている。そして、「知識労働」も今後は機械化・IT化により代替されていく(Frey & Osborne 2017)。「感情労働」は今後も人が担う業務として残存する。ただし、その「感情労働」も比較的単純なものと、高度なものとに分類されていく(Gratton et al. 2016、三輪2021)。そして、AIが普及した後の労働市場で高く評価されるのは、高度な創造性や提案能力等を伴う知識労働や感情労働に限定されるという。求められるということである。Hochschild (1983)によれば、感情労働の特徴として以下の3点を挙げている。①対面あるいは声による顧客との接触が不可欠である、②労働者は他人の中に何等かの感情変化(感謝、満足等)をおこさなければならない、③雇用者は、研修や管理体制を通じて労働者の感情活動を支配している。また、例として「客室乗務員」を挙げ、「対人サービスを行う客室常務員は、笑顔を絶やさず、丁寧なサービスをしなければならず、そうした気遣いが仕事となって、会社からの管理の対象となり賃金が支払われるようになると、それは感情労働と呼ばれるものになる」としている。つまり、感情労働とは、「相手に望ましい感情的な変化を生み出すために、労働者側が自分自身の感情をコントロールし、適切に用いる必要がある職業や仕事」を意味している。また、感情労働には、「表層演技」(相手に望ましい感情をもってもらうために自分の外見や感情を装うもの)と、「深層演技」(自分自身の感じ方をその仕事に適したものに変えていこうとするもの)がある。いずれも、それを続けていると疲労につながり、かつ、うまくいかなかった場合に罪悪感を持ってしまう場合もあると指摘している。図表2 サービス業務分布図(出所)高橋(2013)p11を一部改変(大手のタクシー運転手を「今後増加する可能性のあるサービス業」から除外:自動運転車の導入が予想されるため)(筆者作成)2.感情労働とは何か労働は、肉体労働(積極的に身体を動かし業務を進めるもの)と知識労働(専門的な知識を活用して報酬を得るもの)と考えられてきたところに、1980年代になって、「感情労働」という労働が存在するという主張が現れた(Hochschild 1983)。

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