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27ある場合などのインセンティブがある場合、低い給与であっても、優秀な人材を集めることは可能である。また、橋本(2017)は、就業時のミスマッチを回避するための情報提供と、自らの業務が「価値が高いものである」という意識を醸成することも大切である、と述べている。その上で、RJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事情報の事前提供)により、就職希望者に対して、組織の良い情報とともに悪い情報(例えば、業績悪化、きつい仕事)を併せて伝え、現実を知ったうえで就職する場合の方が就職後の定着率は高く、勤務に対する意欲も高まるとしている。そして、自分が従事する業務は誇りに思っても良いという意識の醸成が大切であるという。人事評価面での取組は、即「モチベーションの維持」につながるものである。中小企業は従業員数が少ないため、細かな評価規定が無くても、上司・管理職が日頃から関与することにより、(評価者毎のばらつきがなく)公平性が保たれる。また、日頃から上司が従業員に関与していれば、従業員と上司の間で評価に対する見解の不一致が発生しにくい。また、社内制度として、現場への一定の裁量権の付与も有効である。いずれも、顧客対応現場で顧客から感謝等の肯定的反応を受ける頻度が高くなり、喜びややりがい、達成感を覚えるようになるためである。ただし、この場合でも、裁量権がいわゆる丸投げにならないように裁量の基準を明確にし、効果的に機能するような管理・支援体制、つまり上司・管理職の関与が求められる。これまでサービス業における感情労働への対応をみてきた。サービス業以外の業種においても、サービス化が進んでいる。サービス化とは、顧客が代金を支払う対象が、「モノ」から「サービス」に変わることである(増田2017)。例えば製造業は、製造した商品を売るのではなく、その商品が提供する価値(サービス)を提供することで対価を得る(延岡2016)。サービス化が進むことにより、製造業の従業員は製造部門から非製造部門に配置される比率が高まっている(伊藤他2020)。したがって、これまで見てきた感情労働への対応は、サービス業に限ったことではなく、その他の産業にも必要とされ、その重要度は高まっていくものと考えられる。(評価体制(制度含む))(図表5) 肉体労働、知識労働、感情労働の比率のイメージ(筆者作成)5.サービス業以外の業種におけおわりにあらためて、世の中の労働を肉体労働、知識労働、感情労働に分けて考える。現在を肉体労働も知識労働も感情労働も、同じ大きさの円と考えてみる。そしてるサービス化

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