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1  2019年の国際結婚総数は21,919人であり、全結婚総数の3.7%となっている。また、その内訳は「夫日本人・妻外国人」が 14,911 件、「妻日本人・夫外国人」が 7,008 件で、前者が後2  我が国では、1975年以降、日本人男性の国際結婚数が日本人女性の国際結婚数を上回る状況が続いており、日本人男性が結婚する外国人女性の国籍は中国やフィリピンなどのアジア3 本稿では児童福祉法第4条の定義に基づき、保育所などに入所する乳幼児を児童と呼称する。30また、我が国の中小企業において就労する外国人労働者の数は増加傾向にあり、そのうち身分資格で滞在する日系人や永住権の取得者、日本人の配偶者などの我が国に長期滞在が可能な在留資格を持つ外国人も一定数を占めるようになってきている。彼らは家族を帯同して日本に在留することが可能であるため、配偶者や子どもといった家族とともに日本に来訪して長期間滞在することや、あるいは日本滞在時に子どもが誕生して、未就学の子どもを保育所や幼稚園などに預けることが考えられる。さらに、全国の国際結婚数は1990年の25,626人から2006年の44,701人にまで増加しており、その後は減少傾向1にはあるものの、我が国全体の総婚姻数の減少により総婚姻数に占める国際結婚の比率自体は近年増加に転じている。そして、統計上は日本人男性の国際結婚数が日本人女性の国際結婚数を常に上回る状況2が続いているため、日本に滞在して子育てに携わる外国人女性の数も少なくはない。このような状況の中で、本稿では中小企業における外国人材の活用に大きな影響を与えると考えられる未就学の外国人児童3を巡る現在の状況と今後の対応策について保育所や認定こども園などの保育施設を中心に考察する。併せて、外国人児童への対応に加えて日本人児童の国際化対応への要望といった課題にも対応するために、今後、保育所において外国人材を保育従事者として活用することができる可能性について、外国人材を保育従事者として雇用する場合に生じるメリット・デメリットなどに留意点しながら検討する。そして、我が国の中小企業における今後の外国人材の活用のためには、保育所の国際化対応が重要であり、外国人材の活用による保育所の機能強化が不可欠であることを提言したい。現在の我が国における保育及び幼児教育の制度は、戦後の1947年に制定された児童福祉法と学校教育法により始まっている。この2つの法律によって、親が就労などで子どもの面倒を見られない場合に利用が限定される児童福祉施設としての保育所と、学校教育体系の中に位置づけられ、幼児教育を目的とする幼稚園が並立し、前者は厚生労働省が所管し、後者は文部科学省が所管する幼保二元体制が成立した。者の2倍以上多い。出身者が多い状況が続いている。千葉商科大学経済研究所客員研究員中小企業診断士小坂 拓也1.我が国の保育所を取り巻く現状 ― 保育・幼児教育制度の現状 ―はじめに厚生労働省が2014年に発表した推計では、2017年の時点で日本に必要な保育士数は46万人、その一方で2014年当時、実際に保育士として働いている人数が40万人弱であることから、将来的に保育所などにおいて深刻な保育士不足が生じると予想されていた。その後、政府が未就労の保育士有資格者に対する就労支援などの方策を実施したことにより、現在は当時の推計よりも状況の改善が見られているものの、我が国の保育所では今なお保育士の確保が容易ではない状況が継続している。外国人材活用による保育所の機能強化の必要性について―中小企業における外国人材の有効活用のための提言-

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