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(1)外国人児童数の増加に対する保育所の状況4 幼稚園と保育所という2つの教育・保育施設の抱える問題点などの解決を目指すために、両者の一体的運用を図ることを目指す政策である。5  認定こども園には、地域の実情や保護者のニーズに応じて選択が可能となるよう、幼保連携型(認可幼稚園と認可保育所の連携、施設共用により一体的な運営を行うもの)、幼稚園型(認可幼稚園に保育所の機能を附加するもの)、保育所型(認可保育所に幼稚園の機能を附加するもの)、地方裁量型(認可施設ではないが地域において幼稚園及び保育所の機能を有するもの)といった多様なタイプがある。6  認可を受けた新たな形態の保育施設としては、2015年の「子ども・子育て支援法」により設立が認められた小規模保育事業に基づく小規模保育所がある。小規模保育所は地域の保育ニーズにきめ細かく対応することを目的として市区町村が認可し、定員が6〜19名と小規模で、待機児童の大半を占める0〜2歳を対象としているなどの点で定員が20人以上である従来の認可保育所と違いがある。7  企業主導型保育所は複数の企業による共同運営が可能であり、また、事業者が保育サービス内容に合わせて自由に設定することができるため、企業が従業員の福利厚生を8 ベビーホテルとは、午後8時以降の夜間保育、宿泊を伴う保育、一時預かりの子どもが利用児童の半数以上のうち、いずれかを満たす施設である。9  保育所保育指針では「保育所では、外国籍の子どもをはじめ、様々な文化を背景にもつ子どもが共に生活している。保育士等はそれぞれの文化の多様性を尊重し、多文化31その後、両者を統合し、一体的な運用を図る幼保一元化4の流れの中から、2006年には新たに保育所と幼稚園の機能を併せ持ち、教育、保育などの総合的な提供を行う施設を創設する認定こども園5制度が成立し、これを内閣府が所管することとなった。このようにして、現在の我が国の保育・幼児教育制度は、保育所、幼稚園、認定こども園という三種類の施設が併存する三元体制の状況となっている。また、現在の我が国の保育所は都道府県知事や政令市長などの認可を受けている認可保育所6と認可を受けておらず、都道府県などへの届出のみで設置が可能である認可外保育施設に区分される。近年は、認可を要しない認可外保育施設の中でも企業が自社の従業員などの子どもを勤務時間中に預かることを目的とした「企業主導型保育所7」や、夜間に勤務する勤労者のために夜間保育などに対応した「ベビーホテル8」といった施設の設置数が増加傾向にある。これらの施設は保護者の多様な働き方に起因した幅広い保育需要を満たしている状況にある。なお、外国籍の子どもの保育については、国としての明確な法的根拠やガイドラインが存在せず、2018年に厚生労働省において策定された保育所保育指針9において指針が示されているのみである。また、我が国の保育所における保育従事者の国籍は、日本人がほとんどを占め、外国人材の活用は極めて少ない。保育所での外国人材活用に係る先行研究としては、三井、韓、林、松山(2018)が日本における「多文化保育・教育」の研究の動向と今後の課題について考察を行い、「多文化保育・教育」についての研究が1990年代以降、極めて限定的なものにとどまっていたことを明らかにしている。また、佐々木(2021)は日系南米人が多い群馬県大泉町の保育園に勤務する外国籍保育士が保育現場にもたらした成果を事例で紹介し、外国籍保育士は多文化共生保育において重要な役割を担う存在であるとしている。ただし、佐々木(2021)は主として外国人児童に対する外国籍保育士の成果を取り上げており、日本人児童に対する外国籍保育士の役割はさほど触れていない。この他に、是川(2013)は我が国における外国人女性の出生力は日本人女性のそれを下回る水準10であることを分析している。是川(2013)では定住による社会適応により出生力が向上する傾向にあるとされていることから、保育所や認定こども園での外国人材活用は外国人女性の社会適応を促進し、出生力を向上させる可能性があると考えられる。近年、我が国で就労する外国人労働者が増加する中で、特に外国人の多く集住する地域においては、保育所や認定こども園などに在籍する可能性のある0歳から5歳までの年齢の外国人の子どもの数は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた2020年以降を除いて一貫して増加してきた(図表1参照)。地域社会に外国人の子どもが増加する中で、日本の保育所や認定こども園に在籍する外国人児童に対する円滑なサポートの実施は保育施設にとって大きな課題となった。特に外国人の子どもとその保護者は日本語力が不十分なケースも多く、言語的な障壁から意思の疎通が難しいことが問題であった。この問題に対して、市区町村が運営する公立保育所や公立認定こども園においては、運営主体である市役所や区役所などで10 有川(2013)95頁参照。目的として、一般の認可外保育所より安く設定することが可能である。共生の保育を進めていくことが求められる。」と示されているが、具体的な保育内容やカリキュラムまでは説明されていない。2. 保育所における日本社会の 国際化への対応

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