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(2)日本人児童に対する多文化共生保育の要望への対応雇用されている通訳者や外国人コーディネーターが保育所や認定こども園を巡回あるいは派遣されて外国人の保護者や子どもの支援を行う、または、専任の通訳者や補助スタッフを保育所などに直接配置し、支援を行うといった対応がなされることが多い11。その一方で、社会福祉法人や中小企業が運営する比較的小規模な保育所や認可外保育施設などにおいては施設独自での通訳者の雇用は資金的にも人材の確保面においても容易ではない。そのため、そのような小規模の保育所などにおける外国人児童とその保護者に対する説明や手続きなどの対応は、現実的には外国人児童とその保護者とのカタコトの日本語による対応や携帯型の通訳機あるいはスマートフォンの翻訳アプリなどを活用した対応に依存せざるをえないことが多くなっている。また、外国人児童とその保護者の日本語力が乏しい場合には、保育士を始めとする日本人の保育従事者が外国人児童の母語である外国語を学ぶことによる対応も可能ではあるが、一般的に外国語の習得には時間がかかり、在籍する外国人児童とその保護者が多国籍に渡る場合、複数の外国語を同時に習得するのは難しいことから、保育従事者が外国語を学ぶとしても保育に必要な基本的な単語の習得程度にとどまらざるを得ないことが多い。さらに、日本に在留する外国人は中国やブラジルなどの出身者が多く、英語を公用語とする国の出身者が少ないために、一般的な日本人が学校で学び、理解することのできる英語による意思疎通は困難であるケースが多く、保育所などにおける外国人児童とその保護者への対応をより困難なものとしている。ただし、外国人の保護者と違って外国人児童の場合には日本の保育所などでの在籍期間が長くなれば、保育士や日本人児童との触れ合いの中で、個々人によって程度の差はあるものの、徐々に日本語を自然習得していく傾向にある。このように我が国の保育所などにおいて近年増加する外国人児童への対応が求められている一方で、中小企業も含めた日本企業の海外展開が進展し、加えて、在留外国人の増加に伴う日本社会の国際化が進展する中で、日本人児童に対する外国語教育や異文化理解などを通じて多様性を理解させる多文化共生保育への需要が新たに発生している。この日本人児童に対する新たな需要についても、日本人の保育従事者が研修などを通じて語学能力の向上や異文化理解を深めて対応することは可能であるが、児童の登園時から降園以降までの長時間に渡って多忙な業務をこなしていて、かつ日本人児童と同じ文化的背景や習慣を持っている日本人の保育士のみでは、児童に多様性を理解させる多文化共生11 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社(2020)『保育所等における外国籍等の子ども・保護者への対応に関する調査研究事業 報告書』152-153頁参照。32図表1 就学前年齢(0歳〜5歳)の在留外国人数の推移出典:法務省「在留外国人統計(各年12月末現在)」より筆者作成

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