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33教育に対する需要を満たすことは難しいと思われる。このため、保育所などにおいて日本人と異なる文化的背景を持ち、外国語が堪能な外国人材を保育従事者として活用することは、日本人児童に対する外国語教育や多文化共生教育に対する需要を満たすことのできる対応策の1つとして考えられる。ただし、外国人保育士が日本人児童や他の国籍の外国人児童に対して保育を行う際には、日本語での保育が原則となるため、保育の質を担保するためにも外国人保育士には一定推準以上の日本語力が求められることには留意する必要がある。(1)外国人児童への対応と外国女性人材の活用促進のために我が国の現在の入国管理制度では、保育所などにおいて外国人材を保育従事者として雇用し、活用することは、永住権を持つ定住外国人の場合においては特段の問題を生じないが、我が国において保育に従事することを目的として外国人材が新たな在留資格を得ることは困難な状況にある。しかし、保育所などにおいて外国人材を保育従事者として雇用して活用することは、特に外国人材と同じ国の出身である外国人児童への対応においては、言語や生活習慣、文化的背景等が共通であることから深い理解に基づくきめ細やかな対応が可能であり、有効な方策となりうると考えられる。外国人材と違う国の出身である外国人児童への対応においても同じ外国人としての視点から、言語的な障壁や文化の違いに起因する外国人児童が日本の保育所で直面する困難を理解し、対応がしやすくなるメリットがあると考えられる。現状、既存の日本の保育所などにおいては、外国人材の保育従事者としての活用はほとんど行われておらず、在留する多数の外国人児童の保育あるいは幼児教育の需要を満たしているのは、主に外国人児童と同じ国出身の外国人が経営する外国人学校の保育部門12である。外国人学校では、日本人の日本語教師などを除いては基本的に外国人児童と同じ国籍の人材が児童の保育や幼児教育に従事している状況にある。このような状況は一見理想的であるが、外国人学校に在籍する外国人児童が外国人学校において日本人の大人や児童と触れ合うことが非常に少ないために、幼少期に日本語を習得し、日本の文化・習慣を理解して、それに馴染むといった点において、マイナスに作用している面もあることに留意しなければならない。外国人児童が成長後に保護者の出身国に帰国する場合は、日本語能力や日本社会への適応力の不足はさほど問題にはならないが、帰国せずに日本での長期間の定住や永住を希望する場合では、我が国の企業への就職活動やその後の就業、そして日常生活などにおいて大きな問題となる。そのため、特に我が国に定住を希望する外国人の児童にとっては、母国と同一の環境とも言える外国人学校で外国式の保育を受けて幼少期を過ごすよりも、外国人児童に対応することができる日本の既存の保育所などで日本語による日本式の保育を受けて幼少期を過ごす方が、日本語能力や日本社会への適応力を身に付けることができ、児童の将来にとって有利となる可能性が高いであろう。(2)多文化共生保育と保育所の人材不足への対応策として外国人材を保育従事者として活用することは、日本人児童に対する外国語教育の充実や多文化共生保育を促進する手段としても有効である。日本人児童の保育においては小学校からの英語教育を見据えて、未就学の段階から英語に対する親しみや日常生活に即した基本的なコミュニケーションの能力を養いたいという需要が存在するため、英語に堪能な外国人保育士に対する需要は高い。そのため、児童の日本語の習得を阻害しない範囲で英語を活用した保育を実践することは有効である。また、英語以外の12 認可保育所ではなく、認可外保育施設としての届出がされている事例が多い。3. 保育所における外国人材活用の提言

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