RSS2023
39/58

5  JETRO、経済産業省共催『「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」実装ウェビナー』(2022年10月13日)、内閣総理大臣補佐官(国際人権問題担当)中谷元(挨拶)、豊田原経済産業省大臣官房ビジネス・人権政策調整室長「「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」策定の背景と概要」1-22頁、根本剛史「ガイドラインの実践にあたっての法的留意事項・実務対応」西村あさひ法律事務所1-25頁、名越正貴「ガイドラインを企業が実践する上でのポイント・アドバイス」EY新日本有限責任監査法人1-22頁、各講演資料参照。M&Aの一般的DDと異なり、①継続的・サイクルで行う必要がある。結果を担保するものではない。②見るべきは経営リスクではなく人権保護である。③ステイクホルダーとの対話・協議が重要。④サプライチェーンなどの関係先も対象になる。⑤CSR部門以外の横断的社内連携も重視される。⑤表明保証条項違反を解除条項で受ける従前の契約の建付けでは解除によって逆に人権侵害が助長されかねない。⑥実効性評価を内部監査対象にすることが望まれる。3  「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議(2022年9月13日)1-67頁 4  日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部ニューヨーク事務所「グローバル・バリューチェーン上の人権侵害に関連する米国規制と人権デューディリジェンスによる実務的37続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため、2030年を年限とする17の国際目標を掲げていることは周知の通りである。また2020年10月責任投資原則(PRI)により、投資にESGの視点を組み入れること等について記載し、機関投資家の投資原則を示している。④国際労働機関(ILO)からは、2017年「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」(ILO多国籍企業宣言)が発せられ、社会政策と包摂的で責任ある持続可能なビジネス慣行に関して、多国籍企業および国内企業に対して直接の指針を示している。日本政府は、2020年10月に国連指導原則等を踏まえ、「ビジネスと人権」に関する行動計画(NAP)を策定した。更に、2022年9月13日「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が政府のガイドラインとして決定されている3。欧州では近時、ハードローとして英国の現代奴隷法、フランスの企業注意義務法、ドイツでもサプライチェーン法が成立し、EUレベルでもサプライチェーンにおける強制労働に関するガイドライン案が発表され、人権デューディリジェンス法令化の検討が進んでいる。米国でも、輸出入規制などを主に、関税法等に基づく強制労働に関連する製品への禁輸措置等の措置が取られている4。日本企業も、サプライチェーンにおける人権への配慮は、国連指導原則、OECD、ILO等の国際ガイドライン、他国の法令等を踏まえ、適切に取り組むことが求められている。経済産業省の人権尊重ガイドラインでは、我が国において事業を行う全企業を対象に、自社・グループ会社、サプライヤー等における人権尊重の取組に最大限務めるべきである、とされる。(1)人権尊重の意義と取組経営陣においては、ガイドラインの遵守はコンプライアンス、あるいは守りの経営姿勢ではなく、経営戦略や経営計画に向けたリーダーシップを発揮すべく、社内態勢整備により、PDCAによる積極的妥当性の検証が求められる、といえようか(私見)。以下、ガイドラインの内容をみていきたい5。ガイドラインは、国連指導原則、OECD 多国籍企業行動指針、ILO多国籍企業宣言など国際スタンダードを踏まえ、企業に求められる人権尊重の取組について、企業の実態に即して解説し、企業の理解の深化を助け、取組を促進することを目的として策定されている。企業においては、グローバルなサプライチェーン等を通じて既にESG・SDGs(Sustainable Development Goals)を意識した取組を行っているところ、人権尊重を通じて社会の信用維持・獲得、経営リスク抑制、更に企業価値の維持・向上に繋げることができる。第1に、人権尊重への取組は、企業が直面する経営リスクを抑制することに繋がる。欧州を中心に人権尊重に向けた取組を企業に義務付ける国内法導入が進んでいる。米国バイデン政権下でも、2021年12月23日成立のウイグル強制労働防止法(Uyghur Forced Labor Prevention Act)に見る通り、強制労働を理由とする輸入差止を含む人権侵害に関連する参照。対応」(2022年6月)1-86頁。3.我が国のビジネスと人権保護への対応4.責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン(経済産業省)

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る