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6  “Human Rights Guidance Tool for the Financial Sector” (UNEP)、「OECD 衣類・履物セクターにおける責任あるサプライチェーンのためのデュー・デリジェンス・ガイダンス」(OECD)、「OECD 紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス 第三版」(OECD)、“Practical actions for companies to identify and address the worst forms of child labour in mineral supply chains“(OECD)、「責任ある農業サプライチェーンのための OECD-FAO ガイダンス」(OECD)、「責任ある企業融資と証券引受の ためのデュー・ディリジェンスOECD 多国籍企業行動指針を実施する 銀行等のための主な考慮事項」(OECD)、“OECD Due Diligence Guidance for Meaningful Stakeholder Engagement in the Extractive Sector”(OECD).7  “Ending child labour, forced labour and human trafficking in global supply chains”International Labour Organization (ILO), Organisation for Economic Co-operation and 38法規制が強化されている。人権尊重の取組を進めることは、法令への対応の更なる強化、グローバル・ビジネスにおける予見可能性の向上に繋がる。第2に、人権尊重の取組を実施し、適切に開示することで、ブランドイメージや投資先としての評価が向上し、取引先の関係性の向上など競争力や企業価値向上が期待できる。企業による人権尊重の取組のあり方は、①人権方針について、内外のステークホルダーに向けて、人権尊重責任に関する約束の表明を行う(国連指導原則16)。②人権DDは、自社・グループ会社およびサプライヤー等における人権への負の影響を特定、防止・軽減し、取組の実効性を評価して、いかに対処したかを説明・情報開示する継続的なプロセスである(国連指導原則 17)。③救済について、負の影響から生じた被害への対応を図る(国連指導原則22)。②においては、人権の範囲として1966年国際人権章典(International Bill of Human Rights)、および1998年労働における基本的原則及び権利に関するILO 宣言(ILO Declaration on Fundamental Principles and Rights at Work)における内容が含まれる。企業は、強制労働や児童労働に服さない自由、結社の自由、団体交渉権、雇用および職業における差別を受けない自由、居住移転の自由、人種、障害の有無、宗教、社会的出身、ジェンダーによる差別を受けない自由等への影響について検討する必要がある。各国法令を遵守しても人権尊重責任を十分に果たしているとは限らず、法令遵守と人権尊重責任とは必ずしも同一ではない(国連指導原則23参照)。負の影響には、(a)企業がその活動を通じて負の影響を引き起こす(cause)場合、(b)企業がその活動を通じて、直接にまたは外部機関(政府、企業その他)を通じて、負の影響を助長する(contribute)場合、(c)企業は、負の影響を引き起こさず、助長もしていないものの、取引関係によって事業・製品・サービスが人権への負の影響に直接関連する(directly linked)場合、の3類型がある。人権尊重の取り組みに当たっては、経営陣によるコミットメントが極めて重要であること、人権尊重の取組にはステークホルダーとの対話が重要であることなどが示される。(2)人権DDの策定とリスク要素、対処および救済(イ)負の影響の特定・評価プロセスについて、①リスクが重大な事業領域の特定、②負の影響の発生過程の特定、③負の影響と企業の関わりの評価、④優先順位付け、の順となる。①リスクが重大な事業領域の特定においては次の各リスク要素を考慮することが考えられる。セクターのリスク6、製品・サービスのリスク、地域リスク(特定国の状況として、ガバナンス(監督機関の強さ、法の支配、汚職の程度)、社会経済状況(貧困率・就学率、特定の人口の脆弱性・差別)等)7、企業固有のリスク(貧弱なガバナンス、人権尊重に関する過去の不十分な行動状況等)。負の影響の特定・評価プロセスの留意点は、継続的な影響評価(非定期の影響評価を含む)、脆弱な立場にあるステークホルダーへの特別な注意(外国人、女性や子供、障害者、先住民族、民族的、種族的、宗教的または言語的少数者)、関連情報の収集、紛争等の影響を受ける地域における考慮(従業員等のステークホルダーが人権への深刻な負の影響を被る可能性があること、通常通り企業活動を行っても意図せず紛争等に加担してしまう可能性が高まること等)である。負の影響への対応の優先順位は、人権への深刻度の高いものから対応すること、複数存在する場合には、蓋然性の高いものから対応することが合理的である。深刻度は、人権への負の影響の規模、範囲、救済困難度の3つの基準を踏まえて判断されるが、企業経営に与え得る負の影響(経営リスク)の大小を基準として判断はされない。企業は、負の影響を防Development (OECD), International Organization for Migration (IOM), United Nations Children’s Fund (UNICEF), 12 November 2019, pp1-102.

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