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44この特許出願時に付与されるIPC番号(国際特許分類番号)は、特許文献(特許内容を掲載した文献)の国際的な利用の円滑化を目的に作成された世界共通の特許分類である。このIPCは発明に関する技術分野を段階的に細分化したものであり、技術の進展に柔軟に対応するため、適宜改正が行われている。図表2にIPCの分類体系の例を示す。そして特許分析の手法として、公開された特許のIPC分類を使用してパテントマップにまとめることで、企業の技術・製品開発戦略を読み解くことが可能である。中小企業の知財活動が進まない理由としては、以下のような理由が考えられる。① 特許の重要性を認識出来ていない。② 特許のノウハウの不足。③ 特許の部門が少ない知的財産担当者の不足。図表1 特許出願の流れ図表2 IPC分類体系例(C04B35/64の場合)千葉商科大学経済研究所客員研究員中小企業診断士白石 尚人1.はじめに企業が事業を行うには、その分野の特許権を取得しながら事業を行うことが一般的である。特許権なしの製造は他社の特許権の侵害による損害賠償や他社からの模倣により大きな損害を被る可能性があるためである。その為に、各社の研究・開発部門は技術戦略、製品戦略、営業戦略に基づき、長期的な観点から戦略的に特許出願を行う。ここでは、代表的なニッチトップの中小企業の公開された特許出願をパテントマップ化し、解析することにより、特許出願の特徴を見ていく。2.特許に関する基本的知識特許出願の流れを図表1に示す。研究や設計において、要となるアイデアを発明者は考案し、簡易な明細書を作成して、知財部や弁理士により詳細な出願明細書が作成され、特許庁へ出願する。出願された特許は、特許庁により、IPC番号が付与され1.5年で公開されている。そして、審査請求を受け、特許として問題なければ、特許登録され、出願から20年の間、独占的権利を得ることができる。3.中小企業の特許出願の状況近年の中小企業の特許出願は、特許庁の中小企業への支援の取り組みにより、徐々に増加傾向にある。しかし、国内の中小企業数は、およそ358万社と全企業数の99.7%以上を占めている中で、特許出願件数に占める中小企業の割合は2020年で未だ17.5%にすぎない。パテントマップからみるニッチトップの中小企業の特許出願の特徴

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