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3そう、まったく同じ品質や価格だったとしても、選ばれるものと選ばれないものがあるということです。選ばれるのは、「強いブランド」である。同じ「STAR」で始まるブランド名であるにも関わらず、92対8の差が生まれる。これがブランドの力だ。地域の中小企業者から、「良いものを作っていれば、あとは黙っていても、消費者が評価してくれる」といった言葉を聞くことがある。もちろん、「良いもの」をつくることは、とても重要だ。自分が納得できる製品を追求するという姿勢は大切である。だが、日本中に良い製品がたくさんある今日、売り手目線の品質だけでは選ばれない。選ばれるためには、品質を超えた「何か」が欠かせない。では、品質を超えた「何か」とは何か。それが、「ブランド」である。「ブランドづくり」は、「モノづくり」を超える。図にするとイメージしやすいかもしれない。ブランドとは、品質を超えた「とんがり」である(図表2)。現時点で、あなたの会社や商品が「ブランド」か、それとも「単なる名前」かを判断する方法を2つ紹介しよう。顧客(買い手)の多くが「・・・らしさ」を、何かしらの肯定的な言葉で表現することができれば、それは「ブランド」である。分かりやすい例として、地域のブランドをとりあげよう。たとえば、「京都」「北海道」「埼玉」「栃木」。いずれの地域にも、素晴らしい地域資源があるが、ブランド力には大きな違いがある。「京都らしさ」、「北海道らしさ」、「埼玉らしさ」、「栃木らしさ」。それぞれの「らしさ」を具体的な言葉にするとどうなるだろうか。全国の消費者に聞いてみた(岩崎,2019)。「京都らしさ」と聞くと、多くの人は「和」「歴史」「伝統」など具体的な言葉で表現することができる。「北海道らしさ」と聞けば、「大自然」「食」「おいしそう」といった言葉が出てくる。「京都」「北海道」は、単なる地名を超えたブランドだ。では、「埼玉らしさ」「栃木らしさ」はどうであろうか。聞いてみると、多くの人が「・・・」と言葉に詰まってしまう。「埼玉」「栃木」は、ブランドではなく、単なる地名だろう。ブランドは、心の連想である。強いブランドは、目を閉じてそのブランドを思い浮かべたときに、 何かしらの映像が頭の中のスクリーンに映し出さ れる。目を閉じて、「京都」「北海道」「埼玉」「栃木」の順番にイメージを頭に浮かべてみよう。それぞれどのような映像が浮かんできただろうか。「京都」と聞くと「寺」や「歴史的な街並み」の映像が浮かんでくる。「北海道」と聞くと「大自然」「広大な風景」が浮かんでくる。全国の消費者に聞いたところ、回答者の9割以上が、京都、北海道ともに具体的な映像が浮かんできたと答えている。一方、「埼玉」「栃木」については、イメージが浮かんだ回答者は、3割にとどまる。図表3をみてほしい。この図は、「イメージが浮かぶ程度」と「行きたい程度」の関係をみたものであるが、両者にはきわめて強い相関がある。この結果は、何を意味するのだろうか。そう、「イメージが浮かばなければ、選ばれない」ということである。 判断方法①  名前の後ろに、「らしさ」という言葉をつけてみる 判断方法②  目を閉じて、頭にイメージを浮かべてみる図表2:ブランドは、品質を超えた「とんがり」出所)岩崎(2017)4.モノづくり ≠ ブランドづくり5.ブランド力を評価する方法

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