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 まとめとして、オリンピックにおけるモノづくりを経験して、第1には「技術は嘘をつかない」ということであり、技術の蓄積の重要さを再認識したこと、第2には製品は信念の昇華であり、モノづくりにはストーリーが必要であること、第3にはビジネスであるので、作ったモノを認めてもらう仕掛けが必要であるということを強調された。 その他にも、同社の卓球を通じた発展途上国支援や障がい者支援、健常者がパラスポーツの卓球選手の競技感覚を体験できる新しい形の卓球台の開発などの事例が紹介された。(報告:中小企業研究支援機構 小谷健一郎)「パラスポーツ向けの卓球台」「開発途上国支援と障がい者支援」(出所)「創造的な仕事で世界を目指す〜オリンピックのモノづくり〜」投影スライド(出所)「創造的な仕事で世界を目指す〜オリンピックのモノづくり〜」投影スライド521992年のバルセロナオリンピック、2016年のリオ・デ・ジャネイロオリンピック、そして2020東京オリンピックでも公式卓球台に選定された。 本講演では、企業の沿革や卓球の歴史を紹介されたあと、国内シェアが60%を占めるようになった2007年、国内市場の拡大よりも海外市場に進出した方が「夢がある」として、オリンピックでの卓球台採用を目標に掲げて以降の経営やモノづくりの考え方を中心に講演された。 オリンピック公式用具スポンサーに選ばれるためには、①企業の安定性、②品質、③過去の大会使用実績、④企画力、⑤国際的な交渉力の5つが必要であるとされた。同社はもともと「反らない天板」などの高度な製造技術をもっていた。それに加え、オリンピックで採用されるために、企画力の強化を図った。例えば、リオ・デ・ジャネイロオリンピックの時には、脚部にデザイン性のある卓球台の開発をはじめ、卓球台の色は開催国のブラジルをイメージさせつつ、「和」のテイストも取り込んだ新色の天板を投入するなど、新たなチャレンジに取り組んだ。 三浦氏いわく、こうした世界レベルでの仕事をするには、創造的な仕事をする意識を持つことが大切であるとされた。そのためには、何より「できる」と信じ続けるスピリットを持ち、そして前例や規範がないことを自主的にやることが重要であるとした。3 所感等 第1部では、多岐にわたる中小企業関連事業と補助金制度について丁寧な説明があり、また補助金制度の活用方法のポイントもご教示いただいた。時代の変化に即した新事業創造や事業転換、海外進出など、中小企業の長期的・持続的な成長の第一歩として、補助金を有効に活用することが重要であることを実感する内容であった。 第2部では、世界で戦う中小企業の競争力の源泉は、技術力とともに製品に対する思想にあるという点が印象に残った。特に卓球台といった規格に沿ったものを製造する中で、三英独自の設計思想を具体的なデザインに落とし込み、それを製品化するプロセスや、モノづくりにおける制限された中での創造性の生み出し方は、グローバルな展開をする中小企業の事例として示唆に富む内容であった。また、パラスポーツで使用する卓球台は、ユーザーとのコミュニケーションの中から新たな創造性が発揮され、これまでに見たことのないものを生み出している点は大変興味深かった。 参加者からのアンケートでは、「第一部では、多岐に渡る補助金制度についてポイントを絞りご説明いただけ、今後の活用の幅が拡がりました。第二部では、中小企業が世界を目指し、そしてそれを実現する事ができるという無限の可能性を改めて認識させていただけたことと、さらに新たな課題を見い出し未来に向けて向上していこうというお姿に感動しました。」との感想や「事例発表で、流山市の三浦(㈱三英)代表取締役によるオリンピックに卓球台を納入するまでの試行錯誤、企業理念、社会貢献等を伺い、中小企業のオンリーワン技術と共にそれを具現していく指導力と会社の組織力に感動しました。」などの感想が寄せられた。

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