RSS2023
6/58

4なぜ、人は京都にひきつけられるのか。なぜ、人は北海道に行きたいと思うのか。それは、イメージが頭に浮かぶからだ。だから、「そうだ 京都、行こう。」はロングランの観光キャンペーンになる。イメージが浮かぶから「行こう」と思う。仮に「そうだ、北海道、行こう。」というキャンペーンがあったとしても、あまり違和感がないだろう。なぜなら、人々の頭には北海道のイメージが浮かぶからだ。では、「そうだ 埼玉、行こう。」「そうだ 栃木、行こう。」というキャンペーンはどうだろう。違和感を持つ人が多いのではないか。具体的なイメージが浮かばなければ、選ばれない。ブランドは売り手の頭の中にあるのではない。買い手の心の中にあるということだ。地域経済の現場では、ブランドに関する勘違いや誤解も少なくない。ここでは、ブランドに関する「いくつかの誤解」を解いておこう。「知名度を高めて、ブランドをつくろう」という言葉を聞くことが多いが、「知名度=ブランド」ではない。先ほど事例に取り上げた「埼玉」「栃木」を知らない日本人はいないだろう。両地域とも、知名度は100%だ。考えてほしい。実際、名前は知っているが、買いたいとは思わない商品は、世の中にたくさんあるはずだ。一方で、全国的な知名度はないものの、特定顧客層に圧倒的に支持を受けているブランドも存在する。各地で、「品質向上によるブランドの確立」「安心安全でブランド化」といったスローガンをみかけることがあるが、品質や安心安全だけではブランド化は難しい。品質の良い製品は、日本にはたくさんある。「安心安全」もあって当たり前の時代だ。ためしに「安心安全」をネット検索してみたら、なんと1億件以上もヒットした。品質や安心安全は、ブランドづくりの前提となる、いわば「土台」のようなものだ。土台が崩れれば、ブランドも崩れる。品質や安心安全に対する信頼を失えば、ブランドだけでなく、すべてを失う。品質が低ければブランドにはならないが、品質が高いからといってブランドになるわけではない。「大企業とは違って、中小企業は広告宣伝費が少ないから、ブランドをつくることはできない」このような意見を中小企業の経営者から聞くことがあるが本当だろうか。あなたが昨日見た広告で、今、具体的に覚えているものはいくつあるだろうか。実際に聞いてみると、1つも思い浮かばない人が多い。テレビやインターネットなどのメディアで多くの広告に接触しているにもかかわらずだ。広告を見るために、テレビやインターネットを見る人はどれだけいるだろうか。ほとんどいないはずだ。そもそも、我々は広告を真剣に見ない。だから、記憶に残りにくい。もちろん、ふんだんにお金を使って広告を繰り返せば、「知名度」は高まるかもしれないが、広告をしたからといって、「ブランド力」が高まるわけではない。後述するが、中小企業の強いブランドは、広告というよりも、「口コミ」や「パブリシティ」(テレビ・新聞・雑誌などメディアによる報道)で生まれるケー 誤解① 「知名度を高めれば、ブランドになる」 誤解② 「品質を高めれば、ブランドはできる」 誤解③  「広告宣伝費がないと、ブランドはできない」図表3:「イメージが浮かぶ」と「行ってみたい」の関係出所)岩崎(2017)6.ブランドに関する誤解

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る