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 5スが圧倒的に多い。顧客が顧客を呼び、メディア が顧客を呼び、ブランドが生まれるというメカニズムだ。口コミも、メディアの報道もお金はかからない。ブランドを生み出す情報伝達は、広告宣伝費がなくても可能だということである。「ブランド化のために、まずロゴをつくろう」こういったケースが、ブランドづくりの現場ではよくみられる。しかし、「はじめにロゴありき」ではブランドづくりは、うまくいかない。ロゴをつくる前に、ブランドの「あるべき姿」「理想の姿」(すなわち、ブランド・アイデンティティ)を明確にすることが欠かせない。ブランド・アイデンティティをシンボル化したもの、形にしたものがロゴなのである。地域経済の現場をみると、「種類が豊富」「多彩な商品群」「バラエティーに富む」「アピールポイントがたくさん」「数々のこだわり」「いろいろな用途に合う」など、数の多さを魅力にブランドをつくろうという企業が少なくない。だが、そういった企業の大部分は、ブランドづくりに成功していない。なぜだろうか。おそらく、「たくさんあります」、「いろいろあります」と聞いても、買い手の頭の中にイメージが浮かばないからだ。既述のとおり、イメージが浮かばなければ、選ばれない。加えて、我々は、日々処理しきれないほど多くの情報のシャワーを浴びている。「たくさん」「いろいろ」など数の多さを訴求するメッセージに対して、消費者は無意識にフィルターをかけてしまう。なぜ、「詰め合わせセット」に、ブランド力の高い商品がないのか。なぜ、人気の駅弁ランキングに「幕の内弁当」が入らないのか。ブランドづくりに求められるのは、「足し算」の発想でなく、「引き算」の発想である。強いブランドは、何かに絞り込んでいる。品質は良く、高い技術もある。しかし、強いブランドが少ない。これが我が国の多くの中小企業の現状かもしれない。では、どうすれば、強いブランドは生まれるのだろうか。以下では、岩崎(2013)で実施した「消費者調査」と「経営者調査」から導出された、強いブランドに共通する6つの特性を紹介しよう(図表4)。ブランドづくりの方向性がみえてくるはずだ。強いブランドに共通するもっとも重要な特性は、「イメージが明快である」ということである。ブランド名を聞いたときに、買い手の頭の中にイメージが浮かぶから、選ばれるのである。名前を聞いても、イメージが浮かばなければ、選ばれることはない。では、どうすれば、買い手の頭に、明快な「ブランド・イメージ」をつくることができるのだろうか。そのためには、売り手側が「ブランド・アイデンティティ」(どのようなブランドになりたいのか、ブランドの理想の姿)を明確化し、メンバーで共有することが欠かせない。「ブランド・アイデンティティ」と「ブランド・イメージ」は、原因と結果のような関係だ。明快なブランド・イメージをつくるためには、明確なブランド・アイデンティティが前提になる。 誤解④ 「まずは、ロゴをつくろう」 誤解⑤  「数の多さを売りして、ブランド力を高めよう」 強いブランドの特性①  ブランド・イメージが明 強いブランドの特性② 感性に訴求している 快である図表4:「強いブランド」の6つの特性出所)岩崎(2013)の分析結果より作成7. 「強いブランド」にはどのような特性があるのか

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