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%%7 ・ 「このトマト、とても美味しいの」    ・ 「当店のトマトは、とても美味しいです」 消費者に聞くと、圧倒的に多くの人が友人・知人の言葉にひかれると回答する(図表6)。業者の言葉よりも、知人・友人の口コミが勝るということだ。 【参考文献】1) 岩崎邦彦(2013)『小さな会社を強くするブランドづくりの教科書』日本経済新聞出版社2) 岩崎邦彦(2017)『農業のマーケティング教科書:食と農のおいしいつなぎかた』日本経済新聞出版社3) 岩崎邦彦(2019)『地域引力を高める観光ブランドの教科書』日本経済新聞出版社4) 岩崎邦彦(2021)『世界で勝つブランドをつくる:なぜ、アメーラトマトはスペインで最も高く売れるのか』日本経済新聞出版ているということだ。あなたは次の2つのメッセージのどちらにひかれるだろうか。では、どうすれば、口コミの発生が促進されるのだろうか。口コミは、広告と異なって、お金を出せばできるというものではない。口コミの発生を促進するための一つ目の条件が、消費者が「伝えやすい」ということである。そのためには、「特徴が絞り込まれていて、言語化しやすい」「語るための材料がある」「ブランド名が短く、覚えやすい」、などがポイントになるだろう。有力ブランドの名前は、シンプルで発音しやすく、個性的で覚えやすいものが多い。たとえば、アップル、アマゾン、ヤフー、グーグル、シャネル、エルメス、グッチ、ユニクロ、ナイキ、ソニー、トヨタ、キヤノン、楽天、あまおう・・・。どれも4文字以内だ。口コミ発生を促進する二つ目の条件は、そのブランドを消費者が「伝えたくなる」ということである。そのためには、「顧客満足度が高い」「独自性、個性がある」「売り手と消費者の心理的距離が近い」などがポイントになるだろう。人は満足すれば、その満足感を誰かと共有したいと思うし、ユニークなものに出会えば、人に伝えたくなる。顧客の交流によって心理的な距離感が縮まれば、顧客は積極的に、その商品の口コミをしてくれるはずだ。本稿では、中小企業のブランドづくりの方向性を検討してきた。あなたがブランド化を検討している商品は、以下に示す「強いブランドの条件」を満たしているだろうか。あらためて確認してみよう。 ・ その商品は、コンセプトやイメージが明快だ ・ 消費者の感性(心)に訴求しているだろうか。 ・ 独自性があるだろうか。 ・ 価格以外の魅力で消費者を引きつけているだ・メディアに取り上げられることはあるだろうか。・消費者が口コミをしやすい特徴があるだろうか。これらの条件をみると、規模の大小による有利不利はほとんどないことがわかるはずだ。規模の小さな企業でもブランドづくりは可能だということである。これまでの我が国の中小企業は、「モノづくり」に力を入れてきた企業が多かったのかもしれない。これからは、モノづくり力を土台にした「ブランドづくり」の時代である。強いブランドは、成り行き任せではできない。戦略性と創造性を持ってつくりあげるものだ。中小企業の積極的なブランド構築への取り組みを期待したい。ろうか。ろうか。図表6:どちらのメッセージにひかれますか出所)岩崎(2017)8.おわりに

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