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継対策における重要な目的のひとつと言える。2.計画的な取組みの重要性財産承継対策は、経営権の承継や相続税対策など内容が多岐に渡り短期間で効果的な対策を打つことは困難である。そのため、事業承継の前提となる「事業の継続」を可能にするには、「財産」と「経営」の円滑な承継に向けて、計画的・長期的な取組みを行うことが重要である。2.財産承継対策のプロセス財産承継対策は、以下の順序でステップを踏んで、全体を見渡した上で対策を検討することが重要である。特に、ステップ1からステップ3までが大切である。1.ステップ1(現状分析)ここでは、経営者の保有する財産を把握して、現時点における相続税の試算を行う。(1)経営者の所有財産の把握漏れがないように財産を種類別にリスト化する。(2)個人名義・会社名義の不動産の権利関係を明確にしておく。これは、個人・法人間の貸借関係によっては、借地権や借家権の発生等も考えられ、その場合、財産評価に大きなインパクトを与えるためである。(3)リストアップした財産について評価を行い、その評価額に基づいて相続税額の総額を算出する。その後、相続人に対しての分割案の検討を行う。2.ステップ2(問題点の抽出)ここでは、保有財産の状況や相続税の総額を踏まえて、問題点や課題を抽出する。例えば以下の点はどうかなどである。(1)経営権の承継について:できれば議決権の3分の2以上を後継者が確保できているかどうか。例えば、先代の相続時に、自社株式を現経営者の兄弟(後継者の叔父叔母)が取得し、後継者が現経営者から株式を相続しても、3分の2以上の議決権を確保できない場合は、特別決議が必要な重要事項について、思うように決定できない事態に陥ってしまう。(2)遺留分の侵害について:自社株式等の割合が高い場合、非後継者への配慮ができているかどうか。例えば、自社株式の評価が非常に高いと、後継者が自社株式を引き継ぐことで、他の兄弟(非後継者)の遺留分を侵害してしまう恐れがある。(3)不動産の保有形態について:借地権や借家権の発生の有無を確認しているかどうか。例えば、社長個人の土地の上に会社の建物が建っている場合、自社株式を評価する際、借地権が計上され株価が想像以上に高くなってしまうことがある。自然発生借地権などは、決算書に計上されていないため、借地権認定されてはじめてわかることなので事前に調査しておくことが必要である。(4)相続税の納税資金について:現状での納税資金不足額を把握しているかどうか。相続税の申告期限は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に金銭による一括納付が原則であるため、相続税の金額を試算しておく。(5)優先順位付けについて:これらの様々な問題点・課題をすべて同時に解決することは困難なため、優先順位を付け、緊急性の高いものから解決していく。3.ステップ3(対応策の検討)以上の課題解決のため、財産の承継方法や節税策等の具体的対応策を検討していく。財産承継対策は、大きく分けると承継対策、節税対策、納税資金対策の3つに分類することができる。⑴承継対策(狭義):財産を後継者に確実に承継する方法は、生前贈与、譲渡、遺言の3つの方法だけである。①生前贈与ア.暦年課税と相続時精算課税贈与税の課税方式として、現在、暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つの選択肢がある。暦年課税制度は、年間110万円まで非課税であるが、相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算される。一方の相続時精算課税制度は、2,500万円までは贈与税を無税で財産を承継できるが、相続が発生した時は、その制度を適用した財産を相続財産に加算しなければならない。また、平成27年からは、孫への贈与も可能になり、贈与者の年齢要件も65歳から60歳へ引き下げられた。以下にそれぞれのメリット、デメリットをまとめてみる。29中小企業支援研究 Vol.2

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