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時事解説まず、自社株式を経営者から後継者に贈与する場合のメリットは、生前に経営権を後継者へ確実に移転することができる。そのことにより、後継者が経営権を取得することで経営者としての自覚が培われる。また、贈与は無償のため後継者が株式買取資金を必要としない点は、譲渡との比較において大きなメリットである。一方、贈与のデメリットは、「後継者に贈与税が課税される」ことと「遺留分の制約を受ける」ことが挙げられる。しかし、贈与税の問題については、相続時精算課税や事業承継税制による納税猶予制度などの特例措置が設けられている。また、遺留分の問題についても、経営承継円滑化法で民法の特例が設けられている。次に、自社株式を経営者から後継者に譲渡する場合のメリットは、生前に経営権を後継者に移転させることができる点は、贈与の場合と同じであるが、株式取得代金を後継者自らが負担して経営権を取得するため、贈与の場合よりも、経営者としての自覚・責任が培われる。また、譲渡の場合は、経営者に株式購入代金を支払うため、遺留分の制約を受けず、他の相続人にも不公平感を抱かれないというメリッイ.贈与税の特例と主な要件(a)配偶者控除:婚姻20年以上の夫婦間において、居住用財産を贈与した場合、贈与税の基礎控除(110万円)を含めて2,110万円まで非課税である。また、この制度を適用した財産は、相続財産から完全に切り離すことができる。(b)教育資金一括贈与:平成25年度税制改正において、教育資金一括贈与の非課税措置が創設された。従来、親子間の扶養義務者間で必要な都度支払われる教育資金の贈与は非課税であったが、一括贈与の場合には課税されていた。今回、祖父母等が、信託銀行等の金融機関に子・孫名義の口座を開設し、教育資金を一括拠出した場合、子・孫ごとに1,500万円までの資金について贈与税が非課税となる。1,500万円の内、学校以外の塾や習い事の月謝等の非課税枠として500万円活用ができる。また、この制度による贈与については、通常の暦年贈与とは違って、相続開始前3年以内の加算は対象にはならない。ただ、受贈者が30歳に達した時点でこの制度の贈与資金が残っていた場合は、その残高に課税される。なお、この制度は、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの贈与に適用される時限立法である。②自社株式の贈与と譲渡経営者が生前に自社株式を後継者へ移転する方法として、贈与と譲渡がある。贈与は無償で渡すことであり、譲渡は、代金の授受を伴う。以下に、生前贈与と譲渡のそれぞれの方法のメリット・デメリットをまとめてみる。【メリット】【デメリット】贈与・生前に経営権の移転が実現する・後継者に経営者の自覚が培われる・後継者の買取資金を必要としない・相続財産を圧縮できる・後継者に贈与税が課税される・遺留分の制約を受ける譲渡・生前に経営権の移転が実現する・後継者に経営者の自覚が培われる・遺留分の制約を受けない・後継者の買取資金が必要となる・経営者に譲渡所得課税が生じる【メリット】【デメリット】暦年課税・3年後に相続税から切り離せる・相続人等以外へも贈与可能・未成年者にも贈与可能・20歳以上の者が直系尊属から受ける贈与の税率が優遇・あまり多額の贈与ができない・基礎控除が110万円である・累進税率で課税される相続時精算課税・多額の贈与ができる・2,500万円まで無税・価格が固定される(将来価格が上昇する財産)・贈与財産からの収益が受贈者に帰属する・贈与者の相続発生時に相続財産に加算される・価格が固定される(将来価格が下落する財産)・受贈者が先に死亡すると二重課税になる・受贈者が20歳以上に限られる30中小企業支援研究

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