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47中小企業支援研究 Vol.2討課題となっている。我が国では、人口減少・少子高齢化による国内需要の減少、過疎化等による地方経済の疲弊、都市一極集中、女子・若者の雇用問題、アジア等の新興国との国際競争の激化という問題に直面している。大企業がグローバル化を推進し、海外生産を増大し、国内取引構造を変質させ、大企業依存の中小企業に対する需要を減退させたことは、中小企業、特に規模の小さい企業にとって、深刻な問題を齎している。これに対しては、それぞれの地域の活性化、我が国の強みを発揮するということで対応していかなければならない。このためには、第1に、小規模事業者に光を当てた施策の再構築を図る必要がある。これにより、地域の雇用・活力の維持・向上を図るとともに、新たな事業展開の可能性を探ることが求められている。第2に、我が国の強みを支える中小企業・小規模事業者の新たなチャレンジを支援する必要がある。これにより、新たなものづくり・サービスを推進するとともに、海外展開を行うことが求められている24。経済産業省は、今後の中小企業・小規模事業者政策の柱として、次の6施策を挙げている25。1.被災地の中小企業、小規模事業者対策に万全を期す、2.地域の中小企業・小規模事業者の活性化を図る、3.小規模事業者支援策を強化する、4.中小企業・小規模事業者のイノベーションを推進する、5.創業・第二創業等へのきめ細かな支援を行う、6.消費税転化対策等を行う、以上である。3. 2 中小企業事業再生支援2008年秋のリーマン・ショック(アメリカ発の金融危機)による輸出減退に伴う景気低迷の後、中小企業は厳しい状況にさらされた。このために、2009年12月には中小企業金融円滑化法による中小企業の資金繰り対策(金利減免、返済猶予)策が実施された。金融円滑化法は2013年3月末に終了したが、その後、政府の指導と地域金融機関が取引先を倒産させないことを望んだことによる融資継続や経営改善支援策の実施などにより、中小企業倒産は増えていない。だが金融円滑化法終了後1年における適用会社(30万~40万社)の現状についてみれば、松嶋英機弁護士が指摘されたように、事実上は破綻状態に近いものである。円滑化法適用会社の中では6万社が危なく、そのうち、3万社はメイン銀行等による支援、1万社は再生支援協議会による支援、2万社は認定支援機関による支援を受けることになっている。だが、円滑化適用企業に銀行は新規貸出を行わないから、その再生が困難である。今後倒産が増えると思われる。中小企業再生をどのように進めるかが今後の政策課題の一つとなっているのである26。むすび中小企業は日本経済の根幹をなすものであり、その維持、発展が日本経済にとって急務の課題となっている。これに大きな関わりを持つ中小企業政策は戦後、日本経済の発展段階に応じて変遷を遂げている。近年では、中小企業政策として中小企業憲章や小規模企業振興関係法が登場している。中小企業政策は今後とも中小企業憲章や小規模企業支援に沿った政策を継承していくべきであると考えられるのである。中小企業は大量性、多様性という特徴を持っている。そのすべての中小企業を政策に支援することも考えられようが、これは実際には困難である。活力のある中小企業を育成するとともに、問題を抱えた中小企業を政策的に支援することを今後も政策的に推進していかなければならない。だが中小企業政策は中小企業の自主性、自助努力、創意工夫を前提とした対応が求められるのであり、財政制約からの政策の限界も認識しておく必要があろう。24 関東経済産業局産業部産業振興課「2014年度の中小・小規模事業者向け施策について」千葉商科大学経済研究所報告、2014年5月17日、等。25 経済産業省「平成27年度中小企業・小規模事業者政策の概要」。26 千葉商科大学経済研究所『CUC View & Vision』第38号、2014年9月、60~61ページ。

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