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49中小企業支援研究 Vol.2の追随といった受身の進出理由からだけではなく、現地における新規市場の開拓による事業開拓といった積極的な進出が目立つようになってきている。このような状況の中で、中小企業の海外展開支援は、わが国の現在の重要政策課題のひとつとして認識されるようになってきた。2010年10月には、政府によって「中小企業海外展開支援会議」が発足し、2011年6月には「中小企業海外展開支援大綱」が策定され、国レベルによる全面的な支援体制が構築された。さらに、第二次安倍政権発足後の2013年6月には、「日本再興戦略」が閣議決定され、中小企業向けの海外展開支援体制の強化が打ち出された。今後は、構築されたこの枠組みを実効的に機能させることが重要であり、大綱や日本再興戦略に基づく支援体制の下で、各省庁や公的支援機関が様々な中小企業の海外展開支援施策を打ち出している。従来、中小企業の海外展開支援にあたっては、(独)日本貿易振興機構(以下、「JETRO」)や(独)中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」)等が実施する中小企業支援施策が中心的な役割を担ってきた。しかし、現在ではこれらの全国レベルの公的支援機関による支援施策に加えて、地方自治体による地域内中小企業の海外展開支援が注目されている。本稿では、現在のわが国における中小企業の海外展開支援の枠組みについて概観しつつ、特に都道府県や政令指定都市レベルの規模の大きな地方自治体による中小企業の海外展開支援のあり方や他の公的支援機関、民間企業との連携について論じてみたい。2.海外展開を行う中小企業が直面する諸課題とその解決策ここでは、わが国の中小企業が海外に事業展開をするにあたって直面する諸課題及びその解決策について、図表3及び図表4を基に考察する。中小企業が海外に事業展開をするにあたって直面する課題は、業種・業態によって様々なものがあるが、ここでは、企業の経営資源である「情報」、「ヒト」、「モノ」、「カネ」の4つの観点から、課題を4つのグループに類型化し、以下のように整理したい。2. 1 海外現地における情報の収集に関わる課題とその解決策中小企業が新規に海外展開を実施するにあたって、最初に直面する課題は、現地における情報の収集に関わる課題である。図表3及び図表4から中小企業は進出先の現地の法制度の把握や商習慣の把握、現地の市場動向・ニーズの把握といった点に課題を感じていることがわかる。例えば、外資系企業に対する規制や優遇策などの進出先の現地の法制度0102030405060708090100(%)中小企業大企業中国(含む香港)アジア(中国を除く)ヨーロッパ北米その他の地域3.611.46.034.444.610.317.619.128.824.2(注)1. 及び2. 「図表1」と同じ。3.「大企業」とは、中小企業基本法に定義する中小企業者以外の企業をいう。出所:中小企業白書2014年版 302ページ図表2 海外子会社の地域構成(2011年度)

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