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56中小企業支援研究研究ノートある。具体的には、海外現地における情報の収集に関わる課題に対応するため、地方自治体の海外拠点では地域の中小企業に対して情報提供を行っているほか、海外展示会への参加をサポートする等の商談に向けた支援を行っている。また、地方自治体によっては、海外拠点にコーディネーターを配置して、現地視察のアテンドや商談、ビジネスマッチングのサポートを行う、あるいは、法律、税務・会計、労務等の相談に対応する等の取り組みを行っている。一部の地方自治体と海外現地政府間では経済交流に向けた取り組みが積極的に進められるようになっており、それらの中には、相手国地方政府と覚書等により包括的な経済協力を結ぶ事例5も見られるようになっている。これらの協定等を締結する際も地方自治体の海外拠点が海外現地との調整等で一定の役割を果たすことが多い。5.今後の地方自治体による中小企業の海外展開支援の方向性について5.1 国や公的支援機関との連携と国等の事業や制度の活用今後、地方自治体による中小企業の海外展開支援の方向性を考える上で、最も重要となることは国やJETRO、中小機構等の公的支援機関との連携であろう。地方自治体の持つ海外拠点の数は限定的であり、地方自治体同士が連携したとしても、すべての海外地域を網羅するネットワークを構築することは難しいため、国やJETRO等の公的支援機関の持つネットワークを活用し、国やJETRO等と連携して地域の中小企業の海外展開支援事業6を実施することは効果的である。また、地方自治体が新興国の現地政府との経済協力に関する合意文書を締結していない場合、国と現地政府間の覚書(MOU)7等による枠組みを活用し、地域の中小企業の海外展開支援に向けた情報収集、ビジネスマッチングの機会を活用することは有益である。例えば、経済産業省はインドやベトナム等のアジアの新興国にビジネスミッション8を派遣しており、一部の地方自治体もこれに連携して参加することで、費用負担の軽減や事業効果を高めることを目指している。また、経済産業省及び外務省では、2014年2月25日より中小企業の海外展開を後押しするべく「海外展開一貫支援ファストパス制度」9の運用を開始している。同制度では、354の参加機関(国、公的支援機関、地方自治体、金融機関等)が、海外展開を目指す中小企業に対して、中小企業が抱える課題の参加機関での共有化を図ることで、一貫的なサポートを提供することとしている。同制度には、一部の地方自治体が既に参加しているが、都道府県・政令指定都市レベルでも未参加の地方自治体が多い。同制度への参加は、地域の海外展開を目指す中小企業への支援に資すると考えられ、地方自治体の積極的な活用が望まれる。5.2 地方自治体同士の連携次に、地方自治体同士が連携して、地域の中小企業の海外展開支援に取り組むことも事業効果を高める1つの方策であると考えられる。例えば、地方自治体が共同で展示会にブース出展を行った場合、スケールメリットにより一区画毎の出展料が安くなることから、中小企業が出展しやすくなる、より活気あるブースになりうる、各自治体が単独でプロモーションをするよりも、共同でプロモーションを行った方がより効果的になりうる、といった利点がある。この他にも、①各自治体の一押しの特産品や伝統食品を組み合わせて日本の食文化10の1シーンを再現する、②地域の伝統工芸品や地場産業品を揃えて生活の上流から下流まで一貫してアピールし、日本の生活の1シーンを再現するよう5 例えば、2010年11月に広島県、2014年11月には神奈川県が、インド南部のタミル・ナドゥ州政府と経済交流の促進に向けた取り組み推進のための覚書を締結した。6 JETROでは、中小企業のビジネス展開意欲が旺盛な新興国・地域に、現地支援プラットフォーム(中小企業海外展開現地支援プラットフォーム)を開設し、コーディネーターによる各種情報提供、個別相談への対応の一層の強化や現地の官民支援機関とのネットワークを活用したビジネスパートナーの紹介・取次ぎ等の各種サービスを一元的に提供している。7 経済産業省は既にインド南部のタミル・ナドゥ州政府との間でインフラ開発に向けた経済協力の推進に関する覚書(memorandum of understanding)を締結しており、2014年11月28日には、新たにインドのアンドラプラデシュ州政府との間でも産業誘致の協力面での覚書を交わしている。8 今までの経済産業省のビジネスミッションでは、神奈川県、横浜市、北九州市等の地方自治体が参加し、インドの州政府との協議や現地企業とのビジネスマッチング、有望サイトの視察等に参加することで、地域の企業の進出促進に向けた情報収集を行っている。9 「海外展開一貫支援ファストパス制度」の事務局はJETROに置かれており、参加機関情報の一元管理、同制度に係る関係機関・企業等からの問い合わせ対応等、同制度の円滑な運営に資する各種事務を担っている。10 近年、注目を集めている世界遺産等も活用して、例えば山梨県と静岡県が共同で富士山周辺の特産品を集めて、海外でフェアを開催する等の取り組みも考えられる。11 例えば、自動車関連の産業が集積している東海地方の自治体が共同出展する場合であったとしたら、各自治体内の中小企業の自動車関連の製品や商品を集めて効果的に展示し、日本の最先端のカーライフを外国人向けに提案するといった展示手法が考えられる。12 大阪府の設置する大阪ビジネスサポートデスクは、海外9か所に設置されており、海外現地における製品・部品等の市場概況や販売可能性等の報告、現地での代理店候補・取引先候補のリストアップ、現地出張時のアポイント調整・出張時の随行等の支援を有料で行っている。13 2013年9月3日~7日に、ベトナムのハノイへ関西広域連合主催でビジネスミッションを派遣、2014年3月6日には、関西広域連合主催で、ロシアの最新ビジネス情報を提供するセミナーとロシア企業とのビジネスマッチングを行う商談会を実施等の取り組みを行っている。

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