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57中小企業支援研究 Vol.2<参考文献>中小企業庁、『中小企業白書』、2010年、2011年、2014年株式会社三菱総合研究所、「地方自治体による企業の海外進出支援」、テーマレポート、2011年8月一般社団法人 日本経済団体連合会、『中小企業のアジア地域への海外展開をめぐる課題と求められる対応』、2013年5月社団法人 中小企業診断協会 愛知県支部、『中小企業の海外進出に関する調査と事例研究』、2012年1月藤原直樹、鈴木洋太郎、「地方自治体の海外拠点の立地に関る一考察」『大阪市立大学経営研究』第63巻4号、2013年2月一般財団法人自治体国際化協会、『自治体国際化フォーラム』、第294号~第299号、2014年4月~9月な提案を行うことで日本の生活様式を紹介する、③地域の中小企業の商品や製品を組み合わせることで、日本の先進技術11を紹介する、といった取り組みを行うことも可能である。また、各地方自治体は、交流を行っている姉妹都市や海外事務所の立地の違いから、それぞれ得意としている地域に違いがあることから、地方自治体同士での情報の共有化や相互支援を行うことなども有効である。情報の共有化や相互支援については、地方自治体による中小企業の海外展開支援が地域間競争としての側面を有しているため、どの範囲までを共有するか調整を要すると考えられるが、それぞれの地方自治体の利害を損なわない範囲で制度化することが可能であろう。例えば、既に地方自治体の一部業務の連携を実現している関西広域連合では、大阪府の設置する海外ビジネスサポートデスクの共同利用12や関西広域連合に加盟する各府県政令市に主たる事務所がある企業を対象としたビジネスセミナーやビジネスミッションの派遣等の取り組み13を他の地方自治体に先駆けて行っており、今後は他地域でも同様の取り組みが波及することが期待される。5.3 民間企業との連携最後に、地方自治体が民間企業と連携して地域の中小企業の海外展開支援に取り組むことも有効である。しかし、民間企業を活用する場合、従前のように民間企業に支援事業そのものを委託して実施する方法は地方自治体には支援の経験やノウハウが蓄積されず、委託民間企業が変更になってしまった場合に事業効果が大きく損なわれることから、必ずしも好ましいものではない。そのため、地方自治体が主体的になりつつも、官民がそれぞれの不足する部分を補い合いながら対等の立場で協業することのできる支援体制を構築すべきである。例えば、①地方自治体と地域の産業界が地域経済の現状や今後の動向について、分析し、討論することができる協議会等の場を設け、そこでの協議結果に基づいて、今後の地域の産業成長戦略としての中小企業の海外展開支援施策を立案する、②海外での事業拡大や新市場開拓に積極的な目的を持ち、将来性が見込まれる地域の中小企業を官民が両者の視点から共同して発掘し、支援対象とする、③支援施策の実行時にも地方自治体が民間企業に事業を全面的に委託するのではなく、地方自治体職員と民間企業社員が協業して支援を行うサポートセンター等を設置して実行する、といった取り組みが有効であると思われる。6.むすび従来、地方自治体の主たる業務とは考えられていなかった地域の中小企業の海外展開支援であるが、今後、日本の地方を再活性化するためには、地域の中小企業が活力を取り戻すことが必要不可欠な要素であり、そのための手段の1つとして、地域の中小企業の海外展開を支援することが重要である。また、地域の中小企業にとっても、地方自治体は最も身近な存在であり、その支援は心強く、信頼できるものであると言える。しかしながら、現状では地方自治体が地域の中小企業のニーズに完全には応え切れていない面があるのも事実である。今後、地方自治体にとっても、地域内中小企業の海外展開に対する支援を、地域の戦略的な外交の一環と位置づけ、積極的に展開して行くことが重要となる。地方自治体が対外政策と対内政策を一体的に経営することで、政策の相乗効果を発揮することができれば、得られるものは大きいと言えよう。

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