中小企業支援研究No4
35/56

トピックス33中小企業支援研究 Vol.4減少している。大手製造業の追従型(下請け)ではなく、自らの意思で海外展開を行う自立型の中小企業の増加と、企業が小規模化していることが読み取れる。このような中小企業が支援対象であることから、支援機関には、国別、業種別、形態別に企業に合ったオーダーメイド的な支援力の強化が求められることになる。さらに、国内の状況を見ると、2015年に出生率が1.46人となり、21年ぶりに上昇したとはいえ、依然として低出生率、高齢社会の進展、3大都市圏への人口の集中(全人口の52%が集中)、経済の成熟化による需要の減退等の構造的な課題が山積している。一方、世界経済を見ると、ここ数年不透明さを増しながら、従来の枠組みを超えたパラダイムシフトが起きている。2016年6月の英国のEU脱退、トランプ新大統領による米国の保護主義への動き等、世界経済の新たな動きが出てきた。このような中、経済成長を続ける新興国、特に、人口6億人を抱えるASEAN経済共同体(AEC)は、年間所得がUS5000$~35000$の新中間所得層が急速に増加するなど、成長するマーケットとして期待が大きい。加えて、我が国と地理的・文化的にも近く、さらに日本製品はクールだとして、耐久消費財、ギフト、加工食品の分野で高い評価を得ている。中小企業の海外販路開拓先として、一考の価値ありと考える。また、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は8億人の市場、世界の40%のGDPを占めるとして、クローズアップされた。トランプ大統領が離脱署名を行い、今後、各国のTPPへの対応が注目されるがグローバル化の流れが急激に変わるとは考えづらく、中長期的な視点でTPP諸国も視野に入れたマーケティング戦略を立案することも求められる。ただし、中小企業の海外展開において、販路開拓にかかる課題は多い。製造コスト削減を目的とした生産拠点設立の場合には、原則、安価で豊富な労働力を調達することが目的となる。海外での生産拠点設立は、通常、主たる納入先が決まっており、生産品目と生産量が計画できれば、生産活動の基本要素である人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)、所謂、3Mが揃い、生産管理を行うことで操業が可能になる。一方、海外販路開拓においては、自社商品を提供するサプライチェーンの構築が必要となる。海外での事業経験が少ない中小企業であっても、自らマーケティングチャネルを確保せねばならず、ここが海外販路開拓の難しいところと言える。したがって、海外で販路開拓を行うためには、海外の流通業、小売業、バイヤー等を探し、事業パートナーとして連携する必要が出てくる。しかし、文化・習慣、商品ニーズ、さらには趣向、ライフスタイル等が異なるため、国内以上にマーケットが不透明となり、ハードルが高い。そうした背景から、中小機構では、国内の中小企業やアジアの企業が共通で活用できるビジネスマッチングサイト「J-GoodTech(Japan Good Technology)」により、中小企業の海外販路開拓支援に力を入れている。現在、日本の中小企業約5000社、日本の中小企業や市場に関心が高い海外の企業約3000社をウェブサイト上でデータベース化し、国内外の企業の販売連携、技術連携等の促進を支援している。このウェブサイトに掲載されている海外の企業は、各国の政府や支援機関が推薦する優良企業であり、中小企業が海外販路開拓を進めるうえで、最適なパートナーと出会える実現性が高い。今後は、企業数の増加と製品、技術、調達部品などの情報発信機能やコミュニケーション機能の充実を図る。さらに、インターネット社会が急速に進展する中、消費者やマーケットは、良質で自分のニーズに適合した製品、サービスを探索することができるようになった。日本でもEコマース(消費者向け電子商取引)市場が4%台の成長を続け、市場規模14兆円に達した。これは、中国やアジアの市場も同様である。投資コストや経営リスクが比較的少なく、時間的・地理的な制約もないEコマースの活用は、ビジネスの新たな流れと言える。最後に、米国の保護主義などの懸念もあるが、グローバル化が急速に進展する国際経済においては、日本が置かれている経済・社会の現状を考えても、中小企業にとっては、海外販路開拓こそ最も光が見える出口になる。ICTの活用等、海外市場を獲得するための積極的なグローバル化への挑戦により、新たなビジネスチャンスを創出すべきと考える。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 35

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です