RSS_2018
20/66

議会でも明確にされ、事業支援・事業再生が信用保証協会の重要な役割であると明示された一方、運用の見直しも為されたと理解している。つまり、金融機関もプロパー融資でリスクを負担し、金融機関と信用保証協会の適正なリスクシェアが重要との指摘である。問題は、リスクシェアしたはずの金融機関や信用保証協会が、中小企業に対して事業リスクを軽減するためのアドバイスを行わないことである。村山:当制度を否定するものではなく、信用保証協会には、創業期や緊急時に金融を補完する役割があると認識している。ただし、制度がある以上は活用することが合理的で、多額の借入先や代位弁済に陥った事業継続先を重点支援する方向性が望ましい。齊藤:創業等支援(LLP含む)の際、金融機関はどのような役割や支援を行なうべきか。榎本:リスクテイクの主体は中小企業との認識が重要である。資金調達が多様化し、中小機構等の支援者は「何が最適な手法か」、また、金融機関等の資金供給者は「何がリスクか」を見極める必要がある。そのリスクを理解・共有することで、金融面を含めた創業等支援の効果が高まる。齊藤:事業承継等の様々な問題を抱える中小企業と取引先金融機関との関わりについて、現況報告もしくは要望等があれば是非とも伺いたい。三井:これまで、長期資金は政府系金融機関、運転資金は地域金融機関数行を中心に融資いただき、海外送金は進出当時の利便性を考慮して都市銀行に依頼する等、目的ごとに区分取引してきた。このような関係において、金融機関ご担当には、私を含めた「中小企業のオヤジ」の“有益な情報が含まれているであろう”多弁を、遮ることなく我慢強く聞き続けるというコミュニケーションの中で、目利き能力を育んでいただきたい。また、実態として多く存在する「決算書が読めない者」に対する、相手の立場に寄り添う配慮に富んだ営業活動を望みたい。林:ITやAIを駆使して早急に結論を導き出すことが可能な時代ではあるが、事業性評価を可能にするには、お互い「出すべきものは出し、受け取るものは受け取る」という、相対した関係性の構築が不可欠である。そのためにも、中小企業診断士を含めた金融機関の皆さまには、さらなる「新しい時代に対する勉強」をしていただき、我々の知恵を上回るツールや武器を備えてくれることを期待したい。活発な議論が展開されたパネルディスカッションと質疑応答【③会場の参加者との質疑応答】質問:金融機関の若手職員が目利き能力を向上させるための手法についてご指南いただきたい。日下:反復して取引先企業を訪問し、経営者や担当者から直接話しを聞くことが最も効果的な訓練である。短期継続融資等の仕組みを活用すれば、話しの内容により可否が決定されるので、なお望ましい。質問:融資以外のソリューション提供の効果的事例があればご紹介いただきたい。日下:地域金融機関在籍当時のことを申せば、圧倒的に事業再生である。自らの債権回収は二の次で、再生支援への取組みは最高のソリューションになる。髙橋:元気な企業をより元気にしていくようなビジネスマッチングや、人材関連企業との連携による後継者の紹介等が挙げられる。三井:経験豊富な50歳超の元金融機関職員の入社による能力発揮、また、取引先の化学会社の紹介による連携の発展等が挙げられる。林:時流の紹介や様々な企画の実施等、地域に密着した取引をしていただいている。質問:地域金融機関にとって望ましい中規模企業への効果的アプローチ手法をご教示いただきたい。三井:手法は様々で、関係性や成果を求めるべく、積極的な姿勢で行動を起こすことではないか。林:企業にとってインセンティブとなる資料等の情報提供は、ケースバイケースで有効となろう。18中小企業支援研究

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 20

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です