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総括 …………………………………………………千葉商科大学経済研究所副所長、中小企業研究・支援機構長商経学部准教授 鈴木直志今回のシンポジウム企画の契機は、ある地域における倒産寸前の企業に対して、その経営者との真摯な交渉過程を通じて確立された信頼関係に基づき、金融機関の支店長の決断で融資が実行された結果、業態転換をともなう再生を果たし、その返済も可能な状況となったにもかかわらず、敢えて借り続けるという関係性を維持することによって、金融機関の利益計上に資しているという事例の見聞からである。支店長の目利き能力が発揮された決断により倒産を免れたこの企業は、今尚、地域の中核企業として雇用を守る等、地域の社会的責任を果たすべく存続しているという厳然たる事実がある。今般、参加いただいた皆さまの報告から、事業性評価に関する様々な知見を得、その有効性を確認することができた。是非、その知見を各位の環境・立場で活用いただければ、本学・本研究所としても幸いである。シンポジウム記録執筆者 ………………中小企業診断士(千葉商科大学大学院中小企業診断士養成コース修了)柴田多敏本日の皆さまの報告から、事業性評価において通底している中小企業と金融機関との関係性の重要さを踏まえ、最後に今回のシンポジウムの所感を述べさせていただく。事業性を見極める目利き力の養成が求められるところ、養成環境が整っていることが前提となろうが、中小企業と金融機関双方の信頼関係が構築されていなければ、不必要な先入観や警戒感が障害となり、前提(≒双方の誠実な情報公開)も儘ならないであろう。とくに、如何に時代は進展しようとも、フェイス・トゥー・フェイスのコミュニケーションの積み重ねが、一見、非効率で遠回りに見えるかもしれないが、一番の近道なのであろう。突き詰めると、事業性評価とは「(広義の意で)人」を見極めることなのではないか、との認識に至った。また、参加者より中小企業診断士の提案能力に対する厳しいご指摘も賜ったが、我々はそのご指摘を心して受けとめるべきであり、中小企業の永続・発展のため、担うべき役割を果たすべく不断の努力を積み重ね、時流に対応した社会の要請に応えなければならないことを改めて決意した。報告者日下 智晴金融庁監督局銀行第二課地域金融機関等モニタリング室長2015年地方銀行から金融庁に入庁。従来の第一義的政策であった不良債権処理から事業性評価への転換・推進のキーマンとして尽力。髙橋 一朗西武信用金庫常勤理事、法人推進部長地域金融機関として中小企業に対する積極的な金融支援と事業支援を展開し様々な課題の解決に寄与、地域経済の活性化にも貢献。榎本 剛士中小企業基盤整備機構ベンチャープラザ船橋チーフインキュベーションマネージャー自治体や支援機関と協力し新製品・新技術の研究開発や新事業分野進出を目指す中小・ベンチャー企業を支援。三井 福次郎三福工業㈱代表取締役会長栃木県佐野市でゴム・樹脂の精錬加工や発泡体の製造販売事業を展開。創業150年の老舗企業ながら積極的な海外展開を図る等、強みを活かした堅実経営を実践。林 英夫武州工業㈱代表取締役、TAMA産業活性化協会副会長世界を目指し青梅市でパイプ部品製造業を展開。日本の伝統的ものづくりに進取的情報システムを積極導入・融合させ生産性向上を追求。19中小企業支援研究 Vol.5

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