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時事解説したがって直接経営体の決定に関与する場合は、コンサルティング・ビジネスとして対応する立場を放棄し、投資家又は投機家としての行動を選択したものと考え、助言を決定に代えるよう求めなければならない。結 果コンサルティング・ビジネスの助言成果を高めるためには、ヒヤリング技術、コーチング技術、経営指標活用技術、プレゼンテーション技術、報告技術等において、新たな経営環境にマッチする工夫を加え、進化する努力が必要となる。第一にコンサルティング・ビジネスの成否は、ヒヤリング技術により決まるとも云われるところであり、限られた時間内において、経営体の人財と全人格的な信頼関係を確立し、必要な情報を共有し、協創しなければならない。そのために、経営体の人財と同一の目線で、経営課題解決策を協創(コラボレーション)することが必要であり、コンサルタントの知見を吹聴し、難解な用語を用いて優越感に浸ることは論外と心得、慎ましく対応することが求められる。特に外来語の新語についてはスペルをつけ、日本語に翻訳して理解を確認するように心掛けなければならない。第二に対話の理解度を高める手法として「コーチング技術」が重要であると指摘されているが、その理由は、コンサルタントが助言の枠を超えて経営体の人財を強引に説得し、同一の見解を採るよう強要することは、好ましくないこととする発想をベースとしている見解といえる。したがって本来のコーチング技術に求められている「非提言・非説得・非誘導・非評価」原則を遵守すべきである。経営課題解決の発想は、経営体の人財が自ら気付き、実行しよう考えるように導くことによって自己実現意識が醸成され、コンサルテーション成果が上がることが期待されていることを理解して当たることが望まれる。第三に経営指標はコンサルティング・ビジネスに不可欠の基本資料であるが、その算出根拠が科学性を有することを以って有効と認められる情報といえる。日本学術会議の科学の智にマッチングする経営指標は、極論すれば存在しないというべきであり、成長率の基準となっているGDPや物価のCPI等も統計技術の面で制約されている指標であり、完璧な指標と見做すことは無理がある。例えばGDPには個人の持ち家の家賃相当分の加算があり、企業の研究開発費も最近では、政策的意図で加算されている。国の経済状態を表す景気の曖昧さは「総じて」「足踏み」「弱含み」「下げ止まり」「持ち直し」「緩やか」「強含み」等殆ど文学的表現で占められており、科学性の片鱗も見受けられない。景品表示法の規定に待つまでもなく「わが社調べ」では、社会的支持を失い、ひんしゅくを受け、ツイッターやブログの標的となる危険性を持つ時代となっているのである。したがって指標発表機関、調査方法、調査期間、発表年次等から指標の有効性を確認し、使用目的にマッチする指標を選び、説明のため分かり易いように再編することが必要である。第四に、最近のコンサルティング・ビジネスにおいて、最も普及しているのは、デジタル時代を反映したプレゼンテーション(発表)技術である。報告者はペーパーの報告書の提出に代え、電子媒体を駆使し、複雑な関係性を分かり易く整理して、図形・色彩・表示サイズ・位置配置等をデザインし、一見して理解できるフォームを投影できるよう、工夫することが求められる。その場合、「パワーポイント」は、複雑なアニメーションの活用より、キーファクターを3乃至5項目にまとめて、訴求点を分かり易い配置とすることに活用すべきである。第五にコンサルティング・ビジネスの経営体に対する助言について、従来は講演式の報告会を行うこととされていたが、今後は経営体の現場担当者の疑問に対し、コンサルテーションの現場で「質疑応答、即聞即答」して経営体のクイックレスポンス(QR)が可能となるような方法に代えるべきである。考 察コンサルティング・サイエンスに基づきコンサルティング・ビジネスがどう展開されるべきかに関し22中小企業支援研究

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