RSS_2018
27/66

エッセイ25中小企業支援研究 Vol.5存在であることに気づかせることで、社員の意識が変わることを示している。2 非言語コミュニケーションの大切さ一方、益々進化する情報化社会のなかで、企業における人間関係はパソコン、スマホなどの情報機器を介してデータ化されたものになりつつある。社内の隣の席に座っている人とのやりとりもメールやSNSなどで行い、直接的な会話がなかなか行われなくなっているという話をよく聞く。確かにデータ化された情報でコミュニケーションすることは文字などで記録が残るので、相手に正確に伝わるというメリットがあるが、反面ちょっとした言葉の使い方のミスから、相手との感情的な対立に発展してしまうという問題もあるようだ。直接の会話でなら起こらないようなトラブルが、文字情報に頼りすぎると起こる可能性があるのである。こうしたコミュニケーションに関するトラブルを回避して、社員の意識を高めるにはどうすればよいのだろうか。そこで考えて欲しいのがコミュニケーションには2つのタイプがあるということである。一つは言語コミュニケーションで、もう一つが非言語コミュニケーションである。組織内のコミュニケーションを円滑にするためには、言語コミュニケーションにばかり頼っていては実現しない。そこに大切なことは非言語コミュニケーションを活用することである。非言語コミュニケーションとは、言語で表現しきれない思いや感情を相手に伝えることで、そのメディアとしては体での動作、目、身体接触、音楽、絵画などがある。多くの経営者は社員とのコミュニケーションを保つ手段として帰属意識を持つことを期待している。言葉で言えば「愛社精神」あるいは「○○社の社員としての自覚」ということであろうか。それを上から押しつけると返って逆効果になる可能性がある。むしろ、社長や上司、同僚との個別の人間関係の積み重ねが帰属意識の基本にあるのだと思う。こうした帰属意識は文章化しにくく、目に見えるものではないが、心の中にあって仕事の中でかなり大きな役割を果たしていることは事実である。こうした帰属意識を持たずに仕事をしていると、常に形式ばかりにとらわれて官僚的な対応になり、その仕事が本来求めている「本質」に到達することは難しくなる。よく言われる社員の「気づき」は、帰属意識を持っているかどうかの違いが影響していると考えられる。このように形にしにくい帰属意識を高めるには、非言語コミュニケーションを用いることが有効である。その場合、人間的な感情の共有化を込めることが大切である。特に企業のような組織の中で、思いや感情を相手に伝える手段としては、飲食、旅行、イベント、スポーツなどを共にすることが有効と考えられている。最近、企業の中で社員旅行を復活したとか以前からあった社歌を歌うようになった、といった話題を聞くようになった。社員旅行や社歌のように経営とは直接関係がないように思われるものを復活させたのは、非言語コミュニケーションの効用を意識しているのだと考えるとよく理解できる。導入した企業(経営者)がこうした背景を知っていたかどうかはともかく、企業内部で行われている仕事のデジタル化が組織内部の人間関係を希薄なものにして、社員の会社への帰属意識を弱めている現状を理解し、それへの解決策として導入しているものと思われる。企業組織の中で、社員の心を通わせる取り組みとしては、上記の旅行や飲食(いわゆる飲み会など)以外にも、儀式の活用(周年記念日、社員の誕生日など)、ボランティア活動(公共の場所の清掃、被災地支援など)、地域貢献活動(お祭りへの参加など)等がある。特に特定スポーツチームの応援は効果がある。野球やサッカーなどのメジャースポーツのスポンサーになるにはかなりのお金が必要であり、中小企業にとっては敷居が高いが、マイナースポーツへの応援はそれほど大きな資金が必要になるわけではない。社員のモティベーションの向上のために、非言語コミュニケーションを使って士気を高める工夫をなさることをお勧めしたい。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 27

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です