RSS_2018
33/66

【はじめに】 印刷・製本業界では、機器の高機能化やコンパクト化、発注元であった企業が自ら印刷機を導入して印刷するようになったこと、大手印刷業者による自製化が進んだことや市場の縮小などもあって経営環境は厳しくなり多くの企業の淘汰が進んだ。そして、印刷・製本業界は今後更なる市場縮小と厳しい競争の下での事業者数の減少が予想されている。 株式会社ブロケードは明治30年(1897年)創業の株式会社関山製本社(合併当時関山雄一・四代目社長)と大正5年(1916年)創業の合資会社黒田製本所(合併当時黒田鍈一・三代目社長)、いわゆる老舗企業2社が平成13年(2001年)に合併した(合併当初:黒田鍈一会長、関山雄一社長:関山製本社は創業から100年超、黒田製本所は創業から80年超であった)。合併の話は1980年前後から同業の5社ではじまり、最後は2社による1対等合併となった。現社名の由来は、両社の所在地であった“神田錦町”の“錦=ブロケード”に由来する。【事前準備と対等合併】 同業者5社による業界縮小への対応策の模索のための意見交換からはじまり、事業提携や合併に向けた話し合いの最後に2社が残った2。そして、本格的に合併を進める段階では大企業の幹部経験者3に依頼して、準備を進めた。その成功には複数の要因がある。第一に、両社の先々代、先代はそれぞれが同業者として知り合いであって、個人的な交流があり、経営者と後継者の双方に信頼感が醸成されていた。また、同業ではあったが取引先は重複せず競合関係になかったことも、合併を受入れることができた理由である。好況期もあり、また、日時が経過する下で各社のおかれた状況など、諸条件の変化もあり、異なる道を選択した企業が抜け最終的には2社での合併となった。 大企業の幹部社員経験者は、合併の1年前から財務分析などを通じて経営状況の明確化を行った。今でいうデューデリジェンスである。また、その人材が、金融機関との交渉を担うとともに、経営陣に対しては経営方針や事業運営についての助言、従業員との関係構築や従業員間の関係円滑化など、経営全NTERVIEW 現在、後継者がなく黒字であっても廃業する企業が増ている。そのため、事業承継やM&Aを通じた企業の存続は重要な支援施策となっており、2019年度は一層支援が強化される見込みである。 ただし、現実的には事業承継やM&Aが進まない。 そのなかで、2社による対等合併を経た創業から120年を超える企業である株式会社ブロケードは、2020年には後継者への事業継承を予定しており、他社の参考事例として紹介したい。プロフィール●1949年(昭和24年)8月27日 生●1967年(昭和42年)、経済学部 卒●1971年(昭和46年)4月 入社<代表取締役社長 関山 雄一><専務取締役 関山 亮>●1975年(昭和50年)1月20日 生●1997年(平成9年)、国際学部 卒●2002年(平成14年)4月 入社●2016年(平成28年)6月 専務就任社長(写真左)と専務(写真右) 工場前にて経営者インタビュー【2.株式会社ブロケード】1 1社は廃業を選択したがその際、取引先と一部従業員を引き継いだ。また、合併の機運が本格的になる前に、事業不振により脱落してしまった仲間も存在した。2 多くの業種で複数企業の合併などによる経営規模の拡大・強化による生残り策が採られた。清酒業では(株)一ノ蔵(4社による合併)、(株)六歌仙(五つの蔵による合併)などが例として挙げられる。同様にクリーニング組合でもグループ化の推進を模索したことがあった。3 黒田前会長の知り合いであり、大企業を早期退職されていた。31中小企業支援研究 Vol.5

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 33

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です