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【評論】最近の中小企業金融の一側面-事業性評価と信用補完制度の見直し、そしてLazy Bank-成城大学名誉教授村本 孜2中小企業支援研究1.事業性評価[1.1]事業性評価とは 地域金融・中小企業金融分野では、事業性評価がキーワードになっている。『中小企業白書2016年版』は、第2部第5章「中小企業の成長を支える金融」で事業性評価融資について詳述している。最後の「白書のまとめ」の中では、「中小企業の成長を支える金融について、中小企業に対する金融機関の貸出態度は改善傾向にある一方で、金融機関から中小企業への貸出は大企業ほど伸びていないことや、金融機関からの借入れのない企業よりもある程度借入れのある企業の方が利益率が高いこと、今後の融資手法として中小企業も金融機関も事業性評価に基づく融資を重視しているものの、現在の財務内容や資産余力が評価される傾向にあることを示した。その上で、事業性評価に基づく融資の推進に向け、企業側には事業計画等を積極的に金融機関に伝えることが必要であり、金融機関側には他の支援機関と連携した支援の強化が求められることを述べた。」(p.472)と書いている。ただ、「今後の」としているように定着感は今一つである。 2014年9月11日、金融庁は「平成 26 事務年度 金融モニタリング基本方針(監督・検査基本方針)」を公表したが、この文書で「事業性評価」が登場し、金融界を中心にその対応について、いかにするかという波紋が生じているかのようである。この事業性評価は、この文書で突然現れた印象もあり、戸惑いの原因とみる向きもあるがそうではない。図1は、金融庁が作成した年表であるが、「事業性評価」は「リレーションシップバンキング ~事業性評価の歩み」として2003年以降、金融庁が一貫して取り組んできているテーマなのである。[1.2]『リレーションシップバンキング報告』と『モニタリング基本方針』の比較 その証しとして、2003年3月の『リレーションシップバンキング報告』と2014年9月の『モニタリ(図1)金融庁ホームページより(http://www.fsa.go.jp/singi/kinyuchukai/siryou/20151221/03.pdf  p.1)

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