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た」と「誰に相談してよいかわからなかった」がともに12.3%となっている。譲り渡しの促進に必要な支援策 アンケートの結果を整理すると、経営資源の譲り渡しの実態としては、以下の点を指摘できる。 第1に、事業をやめた企業の約3割が経営資源を譲り渡しており、経営資源の譲り渡しは少なからず行われている。 第2に、卸売業での譲り渡しや従業員を譲り渡した企業が多かったように、業種や経営資源の内容によって譲り渡しの行われやすさは異なる。 第3に、譲り渡した企業の約75%が譲り渡して良かったと回答しており、経営資源の譲り渡しは円滑な廃業を促すうえで有用といえる。 第4に、経営資源を譲り渡していない企業では抵抗感について「わからない」という回答が3分の1を占めるなど、経営資源の譲り渡しは広く認知されているとはいえない。 以上を踏まえて、経営資源の譲り渡しを促進するために必要な支援策を考えると、まず、情報提供やコンサルティングによる経営者の啓発が挙げられる。譲り渡しの意義やメリットをうまく伝えられれば、廃業にあたって経営資源を譲り渡したいと考える企業は増えていくだろう。 次に挙げられる支援は、譲り渡しの相手を紹介するとともに、譲り渡しの価格についての情報を蓄積し、対価の相場を形成することである。 最後に、経営資源の譲り渡しをよりスムーズに行うための支援も必要となるだろう。譲り渡しに関する具体的な手続きを相談できる専門家・専門機関や、相手探しから譲り渡しまでをまとめて依頼できる業者・支援機関を紹介するなど、実際に譲り渡しを行う際の障害を減らす取り組みが求められる。 経営資源の譲り渡しは、現在のところ、必ずしも一般的な取り組みとはいえないが、従業員の雇用を維持できたり取引先に迷惑をかけずにすんだりするなど、廃業時に直面する課題を解決する手段となりうる。経営者の高齢化が進展し、高齢を理由とした廃業の増加が予想されるなか、その重要性は今後、高まっていくだろう。【参考文献】中小企業庁(2014)『2014年版中小企業白書』中小企業庁(2017)「中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ヶ年計画)」帝国データバンク(2016)「2016年 後継者問題に関する企業の実態調査」41中小企業支援研究 Vol.5

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