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下、入国管理法)」が改正され、新たに日系人の子孫(「日本人の実子(日系2世)」および「日本人の実子の実子(日系3世)」に限る)等を受け入れるための「定住者」の在留資格が新設された。この結果、日系の外国人に対して、日本入国の扉が開かれ、かつてブラジルやペルーに移民した日本人の子孫たちの入国が急増することで、全国の在留外国人数及び外国人労働者数が大幅に増加した。彼らの多くは、人手不足に悩む中小企業、とりわけ製造業の現場での労働に従事するようになり、特に製造業が盛んな愛知県を中心とした東海地方や群馬県等の北関東地方において、多く居住するようになった。その後、日系定住外国人の数は増加の一途をたどった。2008年のリーマンショックに伴う経済危機や2011年の東日本大震災の影響で、日系定住外国人の数は一時的に減少傾向になったものの、近年の経済情勢の改善に伴い、2013年末からは再び増加傾向を示し、入国管理法の改正以前の1989年の在留外国人数984,455人に比べ、現在の数は約2.4倍となっている。さらに、政府は日系4世についても日本において就労できる制度の創設を検討していることから、今後も日系定住外国人の増加が見込まれる。これらの急増する日系定住外国人に対して、政府は、2014年3月に「日系定住外国人施策の推進について」を策定し、日系定住外国人を地域社会を構成する一員として捉え、日本語習得などを図る職業教育や職業訓練を実施する等、彼らが日本社会で生活するための支援施策を実施している。(2)外国人技能実習制度の創設とその拡充 日系定住外国人以外の外国人労働者の増加要因としては、外国人技能実習制度の創設が挙げられる。これは、1960年代後半頃から日本企業の海外現地法人等で社員教育として行われていた研修制度が評価され、これを原型として、1993年に国際交流と国際貢献の一環として制度化されたものである。外国人技能実習制度の趣旨は、新興国や開発途上国から実習生を迎え、日本で習得した技能、知識を母国に持ち帰ってもらうことに主眼が置かれているため、技能実習生は厳密には労働者ではなく、研修生とされている。そのため、外国人技能実習制度の根拠法令である技能実習法では、同制度の基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条第2項)と明記されている。 外国人技能実習制度では、外国人技能実習生は、日本国内において、企業や個人事業主等の実習実施者と雇用関係を結び、最長3年間の期間の中で、技能実習計画に基づいて、出身国において修得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を図ってきた。 外国人技能実習制度は、前述のように国際貢献のための制度であるが、技能実習生は実態としては、受け入れ先企業では労働者同様に扱われることが多く、わが国の産業を下支えする、なくてならない存在となっていった。特に、2007年のリーマンショック以降、それまで製造業の現場を支えていた日系定住外国人が急速に減少したことから、企業が中国、ベトナム、フィリピン等の主としてアジア出身の外国人技能実習生を活用することによって、人手不足を補おうとする傾向が強まった(図表2)。政府もまた、外国人技能実習制度を拡充し、外国人を積極的に活用することによって、建設、介護、農業等の産業分野の活性化を目指すようになった。介護分野では、既に2004年以降、介護人材不足を解消する観点から、政府間で結ばれた経済連携協定(EPA)に基づいて、インドネシア、フィリピン、ベトナムから外国人看護師及び介護福祉士候補者の受入れを開始していたが、外国人技能実習生についても同様に介護の分野での外国人の活用拡大を目指す方針を決定した。 2016年11月には、外国人技能実習制度の見直しが行われ、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の改正(以下、改正技能実習法)」及び、「出入国管理・難民認定法の改正(以下、改正入国管理法)」が国会で成立し、2017年11月に施行された。この改正技能実習法では、認可法人として「外国人技能実習機構」を設立し、技能実習計画の認定等を同機構が行うことで技能実習の管理監督体制を強化する一方、対象職種に43中小企業支援研究 Vol.5

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