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用できるメリットがあった。 しかしながら、現在、日系定住外国人においても、その子弟の中には高等教育を受け、企業の事務職として就職する者、あるいは自ら起業し、母国との橋渡しのビジネス等をする者が現れている。そのため、日系定住外国人を、単に人手不足解消のための安価な労働力の供給先として捉えるのは、現実にそぐわなくなってきていると言えよう。親の世代と比べ、日本語能力が高く、日本の文化・習慣への適応度が高い第2世代の日系定住外国人は、地域の中小企業を支える人材として各地で活躍し始めている。今後は、彼らの能力適性を有効活用し、将来の中小企業の経営を支える人材として育成することが、経営戦略上、求められているといえよう。(2)外国人技能実習生の活用について 外国人技能実習生については、他の定住外国人がハローワーク等の通常の労働市場経由で雇用されているのに対し、外国人技能実習生はそうはなっていないため、国際協力の趣旨にあった運用がなされていないとか、低賃金での労働や、残業代の不払い等の不正な労働条件での雇用となってしまっている事例がある等の問題点が指摘されていた。 前述した2016年の技能実習法改正は、これらの課題を解決するために実施された。この改正では、技能実習生に対する人権侵害行為について禁止規定を設け、違反に対する罰則を規定することにより、外国人技能実習生を保護する措置を講じた。厚生労働省が2017年8月に発表した平成28年度「帰国技能実習生フォローアップ調査」によれば、日本在留中にコミュニケーション以外で困ったことがあったかどうかを問う設問に対して、「困ったことはなかった」と回答した外国人技能実習生は全体の76.3%となっており、現在、外国人技能実習生を取り巻く状況は概ね改善しているといえよう。また、技能実習期間を通じて学んだことが「役に立った」と回答した外国人技能実習生も、全体の95.7%となっており、全体的にポジティブな回答状況となっている。ただし、パスポートを取り上げられた(1.1%)、預金通帳を取り上げられた(0.4%)等、少数ではあるが、実習期間中に問題となりうる行為を行っている企業も存在しており、企業の受入体制の一層の改善は必要である。 若い世代の多い外国人技能実習生を雇用することで、高齢化の進む中小企業の現場にも活力が生まれ、また、外国人技能実習生の勤勉な勤務態度は若い日本人従業員の模範となりうる等、外国人技能実習生を雇用することで生じるメリットが多い。最長でも5年間という制約があることから、企業の永続的な中核人材として活用していくことは難しいが、帰国した後に、外国人技能実習生を優秀な現地社員として採用する等の活用は可能である。制度の趣旨である「国際貢献」を促進する意味からも制度の有効活用が望まれよう。(3)留学生の活用について 企業の海外取引等が進展する現在、中小企業でも、製造業を中心とした多くの企業が中国や東南アジア等に現地法人や海外工場を持っている企業は多く、母国語と日本語の両方を高いレベルで運用できる留学生は、海外市場の開拓や将来の現地法人の幹部候補等、日本と海外を橋渡しする人材として活用しやすい。特に、日本人で語学が堪能な者は、英語、中国語、韓国語、その他西洋言語に偏っており、東南アジアや南アジアの諸言語に堪能な日本人は非常に少ないことから、これらの地域出身の留学生が活躍する場は大きい。しかしながら、留学生の多くは、日本人学生と同様に知名度の高い大企業への就職を志向する傾向があり、中小企業が優秀な留学生を獲得するためには、日本人従業員と分け隔てない待遇や職場環境、さらには将来の幹部候補としての登用等のキャリアビジョンを明確に留学生に示すことが重要である。 また、製造業のみならず、近年、訪日外国人旅行者数が急増している観光関連業においても、留学生の活用は有効となる。訪日外国人旅行者は、リーマンショックや東日本大震災の影響で一時的に減少したが、その後、急激に回復し、2016年には、過去最高の2,400万人を超えている。今後も、2019年45中小企業支援研究 Vol.5

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